大学生の基本的学習観の研究 : アイデンティティ・孤独感・映画鑑賞のあり方と関連づけて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
大学生の基本的学習観について,アイデンティティ,孤独感,及び映画鑑賞のあり方との関係において,検討することが,本研究の主要な目的である.1年生,上級学年の学生の2群からなる162名の大学生に,思春期・青年期をテーマとした映画を鑑賞させた.映画は2種類あり,各群は1種のみ鑑賞した.直後に映画鑑賞のあり方を評定する課題,基本的学習観,アイデンティティ,及び孤独感を査定する質問紙を実施した.回答に対する因子分析,及び項目分析の結果に基づき尺度構成を行い,尺度間の関係の分析には主として相関分析を用いた.基本的学習観の測定尺度は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」,「方略志向」,及び「意味理解志向」の4尺度で構成した.「アイデンティティの確立」の進んだ被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「意味理解志向」も強い傾向が見出されたが,「アイデンティティの基礎」は学習観に関わりがないことが示された.3尺度からなる「孤独感」尺度の中で人間どうしの「理解・共感の可能性」への期待・信頼を査定する尺度の得点が高い被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「方略志向」と「意味理解志向」も強いことが示されたが,「孤立感」については,1年生では「孤立感」の強い者が「方略志向」も強いが,上級学年では,「孤立感」の強い者は「方略志向」が弱いという学年によって全く反対の結果が示された.また,「自己の個別性の自覚」が強い被検者は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」が強く,「意味理解志向」も弱くはない傾向が見出された.1年生では「自己の個別性の自覚」が強い者は「方略志向」も強かった.上級学年群では,映画の「卓越性」に高い評定を与えた被検者ほど「方略志向」,「失敗に対する柔軟性」が強く,「過程重視志向」も弱くないこと,また「強靭」に高い評価を与えた被検者ほど「方略志向」が弱くはない可能性が示唆されたが,1年生では基本的学習観と映画鑑賞のあり方との間に有意な相関は見出されなかった.以上の結果は,アイデンティティ,孤独感において発達の進んだ被検者は,基本的学習観もポジティヴであり,映画鑑賞力も高いであろうという仮説を概ね支持するものであった.
著者
関連論文
- 大学生の基本的学習観の研究 : アイデンティティ・孤独感・映画鑑賞のあり方と関連づけて
- 大学生の「孤独感」と「アイデンティティ」の研究 : 映画鑑賞と関連づけて
- 大学生における孤独感と同一性の混乱 : ひとつのケース・スタディ
- 思春期における発達 : 「ストレス」と「孤独感」という視点から