国際生活機能分類(ICF)による大学生活の評価と心拍数による身体活動強度の推定 : 肢体不自由のある大学生を対象とした事例研究
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概要
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障害のある学生の教育的なニーズの把握や支援は大学の社会的責任(University Social Responsibility:USR)における重要な課題の1つである.本研究では,肢体不自由のある女子大学生を事例対象として,国際生活機能分類(ICF)を活用して学校生活における生活機能と障害を評価した.また,心拍数の長時間記録を手がかりに身体活動強度を推定し,ICFに反映されない身体的な負担度や弊害についても検討した.被験者は脳性麻痺による四肢麻痺があった(機能障害).そのため,歩行および移動に活動制限があり,それは滑りやすいスロープや手すりのない階段など環境的な阻害因子によってさらに増大した.被験者の友人や同僚との関係は学業や学内コミュニティへの積極的な参加を促すものであったが,一方で,普段コミュニケーションのないあるいは少ない対人関係や社会的態度は疎外感や参加制約をもたらした.心拍数記録からは,この障害学生の通常歩行や最速歩行の身体活動強度が,それぞれ,健常学生の最速歩行や走行の強度に匹敵することが明らかになった.本研究の結果から,大学の社会的責任を企画・実施する際には,物理的な環境の改善のみならず,障害の理解,対人関係,社会的態度に関わる教育・啓発,また,日常生活での過大な身体的負担に起因する過用症候や合併症の予防などに考慮すべきことが示唆された.また,多岐にわたる支援を組織横断的にコーディネートする際に,その専門領域である経営学の豊富な知識が有効に活用できると考えている.なお,本研究は肢体不自由のある大学生1名を対象とした事例研究であったが,引き続き被験者数を増やし,また,障害の範囲を広げて研究成果をより一般化していきたい.
著者
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三田 岳彦
川崎医療福祉大学大学院医療福祉マネジメント学研究科医療情報学専攻
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三上 史哲
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療情報学科
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樫部 公一
川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科医療情報学専攻
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今林 宏典
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療秘書学科
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樫部 公一
川崎医療福祉大学 医療技術学部 医療情報学科
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今林 宏典
川崎医療福祉大学 大学院医療福祉マネジメント専攻修士課程
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三田 岳彦
川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学研究科医療情報学専攻
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三上 史哲
川崎医療福祉大学医療技術学研究科医療情報学専攻
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三田 岳彦
川崎医療福祉大学医療福祉学研究科医療福祉マネジメント学専攻
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