孤独のなかで見ること-リルケの『マルテの手記』 : 第三章美的に、そして生き方においてもポジティブな手記
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概要
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今回の紀要では、ドイツの詩人、R.M.リルケ(1875-1926)の代表的散文作品『マルテの手記』のなかの、「美的、そして生き方においてもポジティブ」(existentiell und asthetish positiv)な形象を描いた手記について扱う。具体的には、ここではその例として、「ブラーエ伯が語るサン-ジェルマン」、「ベッティーナ」「ベートーヴェンを思い起こさせる、ある作曲家」についての手記を例にして、孤独と見ることの関係が考察される。美的、そして生き方においてもポジティブな手記は、同じ孤独者の視点に立ちながら、しかしネガティブな手記が抱えていた問題、すなわち自身および周囲との齟齬、そしてそれに由来するグロテスク、ないし無定形な形象の登場といった問題を解決している。すわわち、ここでは、分裂の代わりに融合が、無定形の代わりに調和が登場する。しかしそのさい、これらの融合、調和の形象は、その舞台を神話化(=非現実化)することによって獲得されたことに留意しなければならない。
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