孤独のなかで見ること-リルケの『マルテの手記』 : 第二章美的ならびに生のあり方としてネガティブな手記
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概要
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ドイツの詩人、R.M.リルケ(1875-1926)の代表的散文作品『マルテの手記』には、一方で自身や周囲と融合した形象が登場する手記群が見出されるが、他方で反対に自身や周囲から疎外された形象が登場する手記群が見出される。拙論では、前者を「生き方において、また美的にもポジティブな」(existentiell und asthetisch positiv)手記と名づけ、後者を「生き方において、また美的にもネガティブな」(existentiell und asthetisch negativ)手記と名づけることにする。今回の紀要で扱われるのは、後者と孤独との関連である。後者の例として4つの手記、すなわち「顔のない女」に関する手記、「精神病院の女患者」に関する手記、「カリフラワー売り」に関する手記、そして「汚れた壁」に関する手記が挙げられる。これらの手記に共通するのは、あらゆる社会性、共同性、人間関係を排除した視点、徹底した孤独者の視点から描かれていることと、それにもかかわらず、ここには現実の現前が意識されていることである。
- 2007-03-30
著者
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