南アルプス荒川岳南東面における氷河地形と植物群落(<特集>中部山岳地域の高山植生と地球温暖化)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
南アルプス中央部に位置する荒川三山周辺には多くの氷河地形が存在している。これらは、典型的な氷河地形の形態を残しているものとしては日本列島のほぼ南限にあたる。また、荒川三山には周北極要素の植物群が残存していて、それらの分布も日本列島において南限となっている。現在までに北海道の高山帯や北アルプスの高山帯における氷河地形と高山植物群落の関係についてはいくつかの報告があるが、南アルプスにおいては極めて少ない。そのため、本研究では氷河地形の分布の南限にあたる荒川岳南東面のカールにおいて、地形学的な観点から植物群落の分布についての調査を行い、立地としての氷河地形とそれに対応した植物群落のタイプについて分布図を作成し比較検討を試みた。調査は赤石山脈(南アルプス)の中央部にある荒川三山のカールのうち、ほぼ完全な形で残存している前岳南東カールで行った。カール内には多くの植物群落タイプが見られ、それぞれのタイプについて方形区を設置し、群落を構成している種の被度、群度、高さの測定を行った。結果としてカール内には8種の地形単位(地形学的区分)が認められ、タイプ分けされた植物群落と地形学的区分には、ほぼ対応した関係が見られた。近年の地球温暖化の影響により低地植物の高山帯への侵入が予測される。これにより高山植物の分布域の減少が考えられるが、低地からの植物が比較的侵入しにくい岩塊地やカール地形は高山植物のレフュージア(避難地)としての重要な役割を果すのではないかと予測した。
- 2008-11-30
著者
-
長谷川 裕彦
明治大学文学部
-
増沢 武弘
静岡大学理学部生物学科
-
冨田 美紀
静岡大学理学部生物学教室
-
長谷川 裕彦
明治大学地理学教室
-
長谷川 裕彦
明治大学文学部地理学専攻
-
増沢 武弘
静岡大学理学部
-
増沢 武弘
静岡大
関連論文
- 八ヶ岳連峰における高山矮性低木キバナシャクナゲとハクサンシャクナゲの群落構造と成長量の比較
- 白馬山系蛇紋岩地の土壌特性と高山植物群落(中部山岳地域の高山植生と地球温暖化)
- 南アルプス荒川岳南東面における氷河地形と植物群落(中部山岳地域の高山植生と地球温暖化)
- 特集にあたって(中部山岳地域の高山植生と地球温暖化)
- 気温観測結果から推定される北アルプス南部常念乗越の森林限界高度と周氷河環境
- 植物 富士山の冬を常緑で過ごす草本植物--高山帯で常緑葉をもつフジハタザオ
- 北アルプス南東部, 梓川一ノ俣谷の氷河地形と氷河の消長
- セールロンダーネ山地地学調査隊報告 1990/91(JARE-32)
- 高山帯に生育するハイマツの融雪期と夏期の針葉のガス交換
- 移動形光合成測定システムの試作とケヤキ・クロマツでの測定例
- 常念岳乗越の風衝地における風速観測
- 南アルプス南部, 赤石岳東面の氷河地形
- 南アルプス中央部における高山草本植物群落
- 南アルプス荒川岳南東面における氷河地形と植物群落
- 南アルプス, 荒川前岳南東カールにおける完新世の地形プロセス
- 南アルプス荒川三山に分布する高山植物群落と氷河地形
- 南アルプスで見つかったアイノコマチゴケ Haplomitrium minutum について
- 富士山南東斜面森林限界の上昇にともなう林床植物コケモモの生育環境と生育状況および形態変化
- 森林限界低木林の一次生産量の推定方法について
- 南アルプス南部のツガ天然林の構造,II
- 南アルプス南部のツガ天然林の構造I
- 南アルプス南部, 赤石岳主稜線付近における高山景観の成立に関わる要因
- 北海道アポイ岳における植物の分布と土壌環境(アポイ岳の植物群落-アポイ岳の高山植物群落の現状と将来について-)
- 北海道アポイ岳の高山植物群落 : カンラン岩土壌における植物群落の遷移(アポイ岳の植物群落-アポイ岳の高山植物群落の現状と将来について-)
- 富士山高山域における種子の土壌への捕捉に対する土壌粒子サイズと種子形態
- 南アルプス南部, 荒川岳周辺の周氷河平滑斜面にみられる構造土
- 南アルプス南部、丸山周辺における周氷河性平滑斜面上の微地形と植生
- イタドリの高地分布とターミネーター構造の変異
- 隔離分布している氷河植物の分子進化
- 葉緑体DNA構造に基づくイタドリの生態学的研究
- イタドリの高地分布とターミネーター構造の変異
- オンタデ(Polygonum weyrichii)のアミラーゼ : 抽出,精製と同定
- 北極圏の顕花植物--北極圏から日本列島まで分布する植物 (特集 雪と氷の世界に生きる--極地方の生物その特異な生態) -- (北極圏の生物)
- 高山帯における山岳地形と高山植物の分布 : 富士山・白馬岳・八ヶ岳・アポイ岳
- 北海道アポイ岳の高山植物群落の現状と将来について(アポイ岳の植物群落-アポイ岳の高山植物群落の現状と将来について-)
- 北海道アポイ岳の高山植物群落の現状と将来について
- 今月の解説 アンデスの極限環境に生きる巨大な"草本植物"--100年を生きるプヤ・ライモンディの調査から
- 環境保全の現状(41)南極における環境保全--廃棄物の処理をめぐって
- 富士山の高山荒原と山頂の自然
- 富士山の砂礫地に生育する多年生草本植物 : 砂礫地における撹乱とフジアザミ群落 (中部山岳地域の高山・亜高山帯における植物群落の現状と将来)
- IB-3 気候変動と高山植物
- 富士山の火山荒原域に生育するアザミ属のCirsium2種生理生態学的研究--実生実験に基づくフジアザミとホソエノアザミの生理生態的比較
- フジアザミの生理生態学的研究--フジアザミの発芽特性
- 海の向うのワンダ-ランド-海外調査こぼれ話(2)霧の中のお花畑--南米の砂漠にロマス植生を追う
- 大型多年生草本植物レウム・ノビレの生育環境と群落構造 (ヒマラヤの高山植物--その適応と生態)
- 南アルプス南部, 赤石岳周辺の周氷河性平滑斜面
- 南アルプスのユネスコエコパークの可能性(ユネスコMAB(人間と生物圏)計画-日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて)
- 日本新産のキイチゴゼニゴケについて(一般講演,第39回日本蘚苔類学会山口大会)
- 南アルプスで見つかったアイノコマチゴケHaplomitrium minutumについて
- 日本産Haplomitrium属の分子系統・比較形態学的研究(一般講演,第38回日本蘚苔類学会埼玉大会特集)
- 南アルプスのユネスコエコパークの可能性