延岡市熊野江川河口干潟に出現する貝類と甲殻類
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概要
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The faunal composition of benthic mollusks and crustaceans was investigated in the Kumanoe River Estuary, Nobeoka, on the East central coast of the Kyusyu island, Japan. In this estuary, the bottom sediment varies from silty mud to gravels. The estuary was divided into seven subareas on these sediment types a well as the variable salinity affected by the fresh water flow. For each of these subareas, the estuarine benthic animals were sampled 30 times from March 2006 to May 2008. In total, 89 benthic animal species including 29 gastropods, 10 bivalves and 50 decapod crustaceans were recorded. Among them, 23 are known as threatened estuary species after the red data book (RDB) published by the Japanese Ministry of the Environment, and 32 after the RDB by Miyazaki Prefecture. A high density population of Ceritium coralium, an endangered gastropod, was found along the creek of the estuary. Several remarkable endangered decapods such as Deiratonofus japonicus, D. kaoriae, Uca arcuata and Sesfrostom toriumii were found to be common. The necessity of protection of this wetland was strongly lined with these rich fauna of benthic invertebrates found in this study.延岡市北部にある熊野江川河口干潟は総面積4ha程度の小さな河口干潟である. この干潟は多様な底質を備え, 海水と河川水の混合により, 広い塩分環境を形成している. 河川上流部の本流域は礫に富み, 下流および右岸側には泥分が堆積しやすい構造を持っている. この干潟からはクマノエミオスジガニが発見された経緯もあり, 底生生物の出現状況と季節変化等の知見を得る目的で, 2006年3月から2008年5月まで30回の調査を行った. 熊野江川河口干潟で, 生息の確認できた貝頬は39種 (巻き貝29種および二枚貝10種) であり, 甲殻類は50種であった. このうち, 環境省RDBに掲載される23稚, 宮崎県RDBに掲載される32種が, 絶滅の恐れのある野生生物としてこの河口干潟から記録されることになった. 特にコゲツノブエは高い生息密度で澪筋内に生息していることが判明した. また, シオマネキ, トリウミアカイソモドキ, カワスナガニおよびクマノエミオスジガニが普通に見られ, アリアケモドキ属の3種が共存するなど他では見られない甲殻類相が確認できた. 本研究により, 底生生物の高い多様性が保持された湿地として熊野江川河口干潟の将来的保全の重要性が強調された.
- 2009-01-30
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- 特集「和名問題を考える」昆虫分類学若手懇談会会報Panmixia第17号, 細谷忠嗣他4名(執筆), 東海大学出版会, 2012年3月30日刊行, 50pp., ISBN1340-4253, 1300円(+送料200円,ただし会費1000円納入でも可)