宮崎港一ッ葉入り江における鳥類の飛来記録と採餌の状況およびコアジサシの営巣について
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概要
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宮崎港の北に位置する9.6haの一ツ葉入り江に出現する鳥類について、これまで1年間の調査による出現種の結果を報告したが、本報では出現鳥類の季節的消長と摂餌生態を報告するとともに、入り江を繁殖地とするコアジサシの営巣の状況と営巣地保全に関する考察をおこなった。2002年から2007年まで、一ツ葉入り江において22科60種の鳥類の飛来が記録され、環境庁レッドデータブックで絶滅危惧I類CRのクロツラヘラサギ、絶滅危惧II類VUのズグロカモメ、コアジサシ、セイタカシギ、アカアシシギ、ホウロクシギおよび準絶滅危惧NTチュウサギ、ミサゴ、カラシラサギが確認された。同記載種であるコアジサシは、2002年、2004年、2006年および2007年に営巣した。留鳥はチドリ科のシロチドリ、サギ科のコサギ、ダイサギ、アオサギおよびカラス科のハシボソガラス、シギ科のイソシギ、カワセミ科のカワセミ、タカ科のミサゴおよびサギ科のアマサギであった。他に非湿地性鳥類10種も出現した。シロチドリは入り江の砂嘴部で繁殖した。夏鳥としてはカモメ科のコアジサシ、アジサシ、クロハラアジサシ、ハジロクロハラアジサシおよびサギ科のササゴイの5種であった。冬鳥は、ガンカモ科のマガモを含む12種が記録された。これらの鳥類に関して、糞あるいはペリットを排出直後に採取し、餌生物の分析を行った。特にシギ類は入り江の甲殻類や魚を良く捕食し、入り江で最も生息個体数の多いコメツキガニが糞やペリットに頻出した。コアジサシがほぼ毎年営巣していたが、特に2006年と2007年の観察を元に一ツ葉入り江のコアジサシ繁殖地としての可能性を考察した。 営巣の攪乱要因としては、台風や大雨による水位の上昇および人・車・飼育動物の侵入の影響が大きく、人的攪乱をできるだけさけることが肝心であるが、自然災害に対しては営巣地の数を増やすことが唯一の対応策となろう。営巣地に必要な立地条件としては見通しの良い荒れ地であることが重要であり、草地化を防止し、砂利などを敷けば、一ツ葉入り江は数百規模の営巣が可能になると考える。The seasonal occurrence of wetland birds and their food organisms were investigated in Hitotsuba Lagoon situated within the Miyazaki Port area. The breeding states of Little Terns in the lagoon and around Miyazaki City were also examined for further consevation in the area. On the basis of 304 times field observation of laggon shore birds from April 2002 to December 2004 and additional observation during the following three years, 60 species including 10 non-true wetland birds were recorded. Among them, the pellets and fecal droppings of 15 species were collected just after excreted from them and analyzed under a microscope in the laboratory. Their major diet was a sand bubbler clab, Scopimera globosa, the most dominant crab species in the laggon. In a single pellet of the Far Eastern Curlew, Numenius madagascariensis, we found 165 right chelipeds of the bubbler crab as well as 156 left ones. The breeding success of a colony of Little terns in the lagoon was disturbed or ignored by the water flow after hard rain and typhoon and also by the human activity, such as fishing, surfing, walking with unchained dogs and sometimes off-road vehicles. However in this small lagoon, we can contron these disturbances and if a part of the lagoon area is desolate of the vegetation, we mwy create a safe breeding field for little terns in Hitotsuba Lagoon.
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- 特集「和名問題を考える」昆虫分類学若手懇談会会報Panmixia第17号, 細谷忠嗣他4名(執筆), 東海大学出版会, 2012年3月30日刊行, 50pp., ISBN1340-4253, 1300円(+送料200円,ただし会費1000円納入でも可)