動詞「おおう」と格助詞
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は、通行の辞書では「他動詞」とされる動詞「おおう」について、史的考察をも加えた上で、(1)(2)の2点を確認し、(3)(4)を史的変遷に関する推論として提示する。(1)「さす」「つのる」「むす」「もつ」「よせる」などと同様、自/他両用が記録上でも確認できる。「おおいかぶさる/おおいかぶせる」の意がともにある。(2)明治以降は、他動詞としての用法が主流で、通行の辞書の記述はその点で当然の帰結である。共起する格助詞も、明治以降は「〜で〜をおおう」で安定している。(3)「おほふ」は、多くの動詞が接尾辞その他により自/他の区別をする中で、それにならわず自/他同形のまま使用され続けた。ただし格助詞「を」と共起する使用状況が意識された結果、「他動詞」とされ、「自動詞」の使用法が激減した。(4)「おほふ」は、自/他両用であった点では「ひらく」と類似する。そして一般的には他動詞、かつ、ときに自動詞にもなり得る点で「かえす/むす」などと共通点がある。また、「もつ」が自動詞「保つ」と他動詞「持つ」のように、漢字について厳密な区別を得たのに対し、「おおう」は「漢字による保証」が得られなかった。その点で「おおう」は「不運」ともいえる存在である。
著者
関連論文
- 動詞「別れる」と格助詞
- 「あたし」考
- 動詞「おおう」と格助詞
- 「〜てほしい」と格助詞
- 「きっと」考
- 「なぜ」と「の」の共起 : 疑問語疑問文における
- 動詞「おおう」と格助詞
- 動詞「浴びる」と格助詞
- 動詞「浴びる」と格助詞
- 格助詞「へ」と「に」の分担領域--時間と空間
- 格助詞「へ」と「に」の分担領域 : 時間と空間
- 「〜テクル」の表現価値
- 動詞「感じる」と格助詞
- 動詞「訪れる」と格助詞
- 「違った」考