「〜テクル」の表現価値
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概要
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本稿は、さまざまの「〜テクル」形式のうち、「即座に相手は断ってきた」「2000年暮れ、日亜が企業機密漏洩で訴えてきた」のような、必ずしも、空間・時間の移動・経過を必要としない、受手の側に心理的な影響(ここでは「落胆し反発する/提訴されて困惑する」となる)が生ずる場合の用法を考察する。その結果として、この用法に関する、山本裕子2000の「対抗関係にあるすなわちマイナス的な事態」、あるいは李廷玉2002の「迷惑」との評価は首肯するものの、一部に新たな状況が生じていることを確認し、その背景をも考えていく。すなわち、最新の状況をみると、必ずしも、「マイナス/迷惑」とも断定できない状況での用例が散見される。まずその事実を指摘したい。またその背景について、とりあえず二つの要因を仮定する。それは、(1)「断られる/訴えられる」などの、「〜に〜れる/られる」形式は、状況によっては「受身」とも「尊敬」とも受け取られ、曖昧であるために避けられやすいのではないか、(2)「動作生が〜テクル」のかたちもあるが、これは動作主を「が」で明示し、その行為を受け手が直線的にあるいは意外性をもって受け止めたことを表現する形式といえるのではないか、の2点である。「〜テクル」形式は、しばしば、「太郎が走って来る」「地域で伝統行事を守って来た」「秋に郷里からリンゴを送ってくる」のように、空間・時間の移動・経過を必要とする。しかし冒頭に示した例のように、受け手の側の心理的な影響に視点がおかれる用法も多く、検討に値するものである。ここでは、これを必要に応じて「心理重視のテクル」として、考察を進める。
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