中国帰国子女と家族への日本語教育 : 1970年代に開始した村
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概要
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本稿では、1970年代に中国帰国子女およびその家族への日本語教育を実践した村の施策とその特徴について検討を試みた。調査地の村では、日中国交正常化以降に親とともに渡日した中国帰国子女の日本語支援を目的に「特別学級」と「社会学級」を開設し、日本社会への適応を目指した日本語教育を実践していた。ところが、普通学級(原学級)の一般児童生徒との交流を経て、帰国子女に対する日本語教育は次第に母語や母文化を尊重する「中国理解教育」へと発展していったことが明らかになった。村を中心に、学校教師・事務員・保健師・村役場職員・村民などの多彩な人材ネットワークの形成がなされ、官民連携の教育実践がおこなわれた。日本語教育には、このように行政と教育関係者や地域住民が連携し、生活者の視点に立脚した言語施策の立案が大切である。村が実践した中国帰国子女教育の成果を、現在および将来の外国人に生かすためには、日本語教育を外国人への「日本語支援」というミクロのとらえ方ではなく、生活全般を見据えたマクロ的な構想と心豊かで広い視野をもって、人間と人間の「交流教育」と捉える、調査地の学校が実践したような視野の転換や拡大の必要性が確認された。
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