赤十字標章の統一を巡る議論とその運用における今日的な課題に関する考察
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概要
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武力紛争時において医療組織とその要員を識別し、保護する特殊標章は、幾多の論争を経て赤十字標章、赤新月標章、赤のライオン及び太陽標章が国際的に承認されてきたが、近時、イスラエルの国際赤十字・赤新月運動への参加を巡り、新たに赤の水晶(red crystal : 2007年11月現在、邦語の公定訳はない)標章の使用を認めるジュネーブ諸条約第3追加議定書が採択された。これにより特殊標章の国際的統一を巡る100年以上の議論に一応の終止符が打たれたといわれる。しかしながら、第3追加議定書の採択が真の恒久的な解決策として評価されるか否かは、今後、イスラエルを含む国際社会が同議定書をいかに誠実に履行するかにかかっている。その一方で、近年、国際社会の構造が大きく変化する中で、赤十字標章の適正な使用と管理を巡り新たな問題も提起されている。その一つとして国連の平和維持活動や国際的NGO等、非国家主体による国際的活動及び個別国家の軍隊の域外活動が拡大したことにより、国家に一元的に付託されてきた標章の使用、管理が必ずしも有効に機能しなくなった現実がある。これらの新たな問題の解決を図るには、関係諸国の合意を取り付けながら国際的な調整を図るとともに、伝統的な標章管理システムを大胆かつ柔軟に見直す努力が求められているといえる。
- 日本赤十字秋田短期大学の論文
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