DNA情報を利用した海洋生物幼生の種判定と定量的解析の試み(<特集>エンドユーザからみたDNAバーコーディング)
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概要
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海洋に生息する生物の多くはその生活史のなかで大きく形態や行動、生息域を変化させる。さらに生活史の詳細がわかっていない海洋生物も多く、特に顕微鏡観察が必要なサイズのプランクトン幼生期をもつものでは、その形態から種を判別するのは困難である。DNAバーコーディングは、こういった海洋プランクトンの種判定に非常に有効な手法である。我々は発電所などの冷却水路系に侵入しその壁面に付着する代表的汚損生物であるアカフジツボMegabalanus rosaの付着時期を予測するためにフジツボ幼生の種判定技術の開発を行なった。ミトコンドリアDNA上の12S rRNA遺伝子領域の塩基配列を比較することで、日本沿岸に生息する主なフジツボの種判定が可能となり、さらにPCR-RFLPにより主要汚損種であるアカフジツボの幼生を検出する技術を開発した。また、野外採集混合プランクトンサンプルからリアルタイムPCRによってアカフジツボ幼生を定量的に検出することが可能になった。このような海洋プランクトン、海産無脊椎動物幼生のDNA情報による種判定や系群解析は、海洋生態系や生物進化に関する研究の手段としてだけでなく、水産資源調査や海洋環境調査の強力なツールとなってきている。今後目的に合った多様なDNAデータベースが構築され、正確でより簡便な検出、定量の技術が開発されることで、海洋プランクトンにおけるDNAバーコーディングの利用分野はもっと広がっていくと考えられる。
- 日本生態学会の論文
- 2008-07-30
著者
-
坂口 勇
(財)電力中央研究所 環境科学研究所
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野方 靖行
(財)電力中央研究所 環境科学研究所
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佐藤 加奈
(株)セレス
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松村 清隆
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境領域
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坂口 勇
(財)電力中央研究所
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松村 清隆
(財)電力中央研究所環境科学研究所生物環境領域:(現)横浜市立大学大学院国際総合科学研究科
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松村 清隆
(財)電力中央研究所 環境科学研究所 バオイテクノロジー領域
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