生理学研究と医療技術(<特集>医療技術と医療福祉学)
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概要
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生命現象を解明するという役割を担う生理学は,多くの研究分野に発展しつつある.現代の生理学は,遺伝子・分子レベルから,細胞,組織,器官,個体,および個体の相互関係における生理機能までを統合的かつ有機的に研究し,そのメカニズムを明らかにするという重要な役割を担っている.本総説では,ヒポクラテスに始まった人類の医学研究,なかでも神経と脳に関する研究の歴史を振り返りながら,現代の医療技術の基盤がどのように築かれたかについて焦点を当てて解説している.1980年以降,コンピュータをはじめとする電子技術や光学的手法の進歩,さらには分子生物学との融合によってもたらされた生理学上の輝かしい発見は枚挙にいとまがない.神経細胞の受容体やイオンチャネル,細胞内での情報伝達機構を担う機能分子の構造が明らかになってきた.遺伝子操作動物の研究により,特定の遺伝子が作り出すタンパク質の細胞内での機能や構造も明らかになりつつある.膜電位感受性色素や緑色蛍光分子を使用した脳内の電気現象のビジュアル化は,脳の神経回路網の解析に有効な手段となってきている.複数の個体が相互に関係しつつ,社会生活を営む上で生じる生態学的,心理的現象までを含めた機能の解明も生理学に与えられるべき課題であるとされている.機能的核磁気共鳴画像化法や光トポグラフィーなどの技術は,そういったヒトの高次脳機能の解析に大きな役割を果たすことが期待されている.さらに,個のつながりである社会においては,地球温暖化やそれに伴う環境破壊,心理的ストレスによる疾患,若年者の情緒不安定による犯罪などの問題が山積されている.現在,環境適応生理学,心理・病態生理学,発達生理学などの重要性はますます高まってきており,生理学は21世紀の多くの分野と連携をとりながら,医療技術を支えていくべきであると考えられる.
著者
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