口腔粘膜への温度・化学刺激が自発性嚥下のインターバル及び喉頭運動時間に与える影響
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概要
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"嚥下は咽頭への感覚入力が引き金となり起こる運動である.この感覚情報は,求心性神経を介して延髄の嚥下中枢や大脳皮質に伝わり,遠心性神経を介して嚥下筋群を活動させる.そこで,感覚入力として各種溶液をしみこませた綿棒を用い,この触圧刺激によって自発性嚥下頻度と喉頭運動時間がどのように変化するかを定量的に検討した.健常成人15名と機能的嚥下障害症例2名を対象とした.まず,安静臥位での自発性嚥下のインターバル,喉頭運動時間を測定した.その後,同一被験者に対して前口蓋弓に各種溶液をしみこませた綿棒で触圧刺激に加えて温刺激,冷刺激,酸刺激を与え,刺激直後の自発性嚥下のインターバル及び喉頭運動時間を測定した.その結果,健常成人では酸刺激直後の自発性嚥下インターバルが有意に短縮していた.また冷刺激直後,酸刺激直後に喉頭運動時間は有意に短縮していた.一方,機能的嚥下障害者においても,酸刺激直後の自発性嚥下インターバルが最も短縮していた.また,各種刺激によりその直後の喉頭運動時間は短縮する傾向が認められた.生理食塩水による触圧刺激や冷刺激は前口蓋弓に存在する機械受容器や冷受容器を刺激するため,孤束核に入る求心性活動が上昇すると考えられる.これにより嚥下中枢の閾値が低下し,自発性嚥下のインターバル,喉頭運動時間が短くなったのではないかと推察される.さらに酸刺激は,他の刺激以上に前口蓋弓からの求心性線維を強く刺激して,嚥下反射の反射弓を促進したと考えられる.症例においても同様の結果が得られたことから,今回の結果は,安全性に配慮した上での嚥下訓練場面における酸刺激の有効性を示唆すると考えられる."
著者
-
古我 知成
川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科
-
古我 知成
川崎医療福祉大・リハビリテーション
-
古我 知成
川崎医療福祉大学・リハビリテーション
-
東嶋 美佐子
川崎医療福祉大学
-
芦田 千春
川崎医療福祉大学医療技術学研究科リハビリテーション学専攻
-
東嶋 美佐子
長崎大学医学部保健学科
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