身体障害児の行動理解における理論的ならびに方法論的問題 : "Somatopsychology"からの問題提起の検討を中心にして
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は、"Somatopsychology"とはどのようなものであるか、理論的・方法論的にどのような問題点を有しているかといった点について検討してみることにより、"Somatopsychology"が身体障害児(者)のパーソナリティや行動の理解、さらにはその教育とリハビリテーションにとっていかなる意味を有するかを明らかにしようとした。この目的のため、"Somatopsychology"に関する文献研究が行なわれた。その結果、"Somatopsychology"は身体障害の心理学的問題を解明する上で、理論的にも方法論的にもいくつかの重要な問題点を抱えてはいるが、次のような点は従来の身体障害に関する諸理論を包括し、一歩前進させたものとして評価されてよいであろうと考えられた。1.身体障害それ自体は単なる物理的事実にすぎないとするところから出発していること。2.身体障害児のパーソナリティや行動における問題を考察するさい、まず第一に身体障害児に現に作用している「心理学的力(Psychological forces)」(要因)を明確にする必要があること。次に、そうした「心理学的力」(要因)との関連において、「もし〜ならば常に…である。」という形でパーソナリティと行動における問題をダイナミックに説明すべきであると説いていること。上のような説明のしかたは「同時存在的説明(contemporaneous explanation)」とよばれる。3.これらの「心理学的力」(要因)のうち、"Somatopsycholohy"では社会的心理学的変数が問題とされる。これらは媒介変数とよばれるものである。社会的心理学的変数としてさまざまなものが考えられるが、最も基本的な変数として、身体障害に対する社会的価値判断、身体障害に対する身体障害児自身の認知のしかたといったものがあげられる。何となれば、身体障害は1つの社会的刺激と考えられるからである。それゆえ、"Somatopsychology"においては、個人の認知的側面を重視する「現象学的接近法」がとられる。4.上述のような媒介変数について考察することによって、身体障害児(者)のパーソナリティや行動における個人差の問題が明らかにされうること、など。
- 1971-03-01
著者
関連論文
- 肢体不自由児の性格・行動に関する研究(2)
- 肢体不自由児の性格・行動に関する研究(1)
- 身体障害児の行動理解における理論的ならびに方法論的問題 : "Somatopsychology"からの問題提起の検討を中心にして
- 病弱・虚弱児の行動理解への現象学的アプローチ
- 肢体不自由児の要求水準行動における個人差へのアプローチ : 社会心理学的変数の役割について
- 肢体不自由児の目標設定行動における自己概念の安定性の役割に関する研究