山陽地方における北方型牧草の生育と化学的成分に関する研究 : 1.収量とその季節的年次的分布

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中国地方の気候区分によれば,山陽と呼称される地方(瀬戸内治岸と中国山地の間に所在する)における北方型牧草の適応性を検討する目的で,岡山県下に栽培されあるいは将来有望と考えられるイネ科牧草…ケンタッキー31フエスク,オーチャードグラス,トールオートグラス,ペレニアルライグラスの4種,マメ科牧草…アルファルファ,バーズフットトリフオイル,ラジノクローバ,レッドクローバの4種を供試し,単播時における刈取時の生育段階が,生育,収量,時期的分布に及ぼす影響について1960年〜1962の3カ年にわたり調査した結果,次の成績を得た。1).3カ年合計収量を比較すると,刈取時の生育段階の如何にかかわらず,イネ科牧草でケンタッキー31フエスク,マメ科牧草でラジノクローバが最も多収であった。2).生育シーズン中の刈取回数は,草高30cm刈取が多く出穂開花期刈取がすくない。なおこの回数は経年的に減少した。3).刈取回数の増加は,収量の減少を招きペレニアルライグラスはその傾向が著しい。マメ科牧草では草種によってその傾向が異なり,アルファルファ,レッドクローバは減少するが,ラジノクローバ,バーズフットトリフオイルは余り変化しない。4).各草種はそれぞれ特異の収量の季節的分布を示し,その傾向には刈取時の生育段階の影響がほとんどみとめられなかった。ケンタッキー31フェスクは季節的変動の比較的小さい草種である。オーチャードグラスは4月から7月初旬までは旺盛な生育をし,その後衰退するが経年的に夏枯れが著しくなる。しかしながら翌春の生育は再び旺盛となる。トールオートグラスは5月〜6月の生育が旺盛で,夏季に入るとやや衰えるが秋季に再び回復し,晩秋に生育が比較的旺盛である。ペレニアルライグラスは4月〜5月に生育が旺盛であるが,気温の上昇とともに衰え夏季に甚しい夏枯れを呈する。秋季の生育の回復は余り期待できない。しかし翌春の生育はかなり回復するが経年的に草生の悪化が著しい。アルファルファはケンタッキー31フェスクと共に季節的変動の小さい草種である。バーズフットトリフオイルは初年の春季の生育はレッドクローバに次いで旺盛であるが,経年的にその衰退が目立つ。しかしながら季節的変動はアルファルファに次いで小さい。ラジノクローバは春季の生育が旺盛であるが,夏,秋季の生育が2年次以降衰える。レッドクローバは4月から6月の間に最も旺盛な生育をするが,夏季以降は著しく衰える。春季にかなり回復するが,その収量分布は経年的に急激に低下する。5).収量の年次的推移は,イネ科牧草は初年次に最高で2年次に低下し3年次に回復した。しかるにマメ科牧草はアルファルファが2年次に最高を示したほかは,何れの草種とも経年的に低下した。年次的変動の大きい草種はペレニアルライグラス,レッドクローバで小さい草種はケンタッキー31フエスク,アルファルファであった。
日本草地学会の論文
1965-09-30

山陽地方における北方型牧草の生育と化学的成分に関する研究 : 1.収量とその季節的年次的分布

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