病虚弱児のもつ心理的問題への対処行動に関する因子分析的研究
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概要
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かつて病虚弱であった成人が、体の弱さに起因する心理的問題にいかに対処してきたか、すなわち心理的問題への対処行動に関して、その潜在因子を探ることを目的として、因子分析的研究を行った。質問紙は、努力により克服したり代償を図ろうとする生産的な面と、困難に負けてしまう非生産的な面を含む20項目から成り、郵送法による追跡調査がなされた。有効回答数は485名(男305、女180、20-42歳)で、病類は喘息、虚弱、肥満等である。(1)時期別・性別の因子構造小・中学校時代では男女の因子構造は類似しており、"救済"および"諦観"が主要因子である。次いで身体面の努力、教養活動、共感的行為に関する因子が続く。高校以後現在までの時期においては、やはり男女は類似しており、"消極的(諦観的)処世"および"身体的克服"が主要因子である。"救済"の占める位置はやや下がり、これと"身体的活動"因子が続き、次いで男子では"教養活動"、女子では"身体的いたわり"となる。すなわち、小・中学校時代では対処行動の深刻な部分が"救済"と"諦観"に分極し、次いで明るい"身体的・教養的活動"が取り入れられるのに対し、高校以後では"消極的(諦観的)処世"と積極的な"身体の克服"という2つの現実的な対処方法が主要因子となる。2時期を通じて、性差よりも時期による相違が大であった。この要因として、健康状態の回復と、年齢段階による解決方法の相違が考えられる。(2)心理的問題の程度と対処行動の関係心理的問題に関する項目の得点から、その程度(強さ)を3群に分け、時期毎に男女込みで3群別に因子分析を行った。3時期を通して、心理的困難度が増すにつれ、消極的な行動から積極的な行動へ、或いは明るい行動から深刻な行動へ変化し、かつ時期により若干の特徴がみられた。(3)今後の課題(1)で、性差が比較的小さく、時期差がある程度明瞭であり、かつ全てのグループで因子の内容がほぼ共通していたことは、これらの因子構造が一般性をもつことをうかがわせるものである。(2)についても、時期差を含みつつほぼ一致した傾向を示したことは、対処行動に及ぼす要因の1つとして心理的困難さが関与していることを裏づけている。既に述べたように、本研究は探索的段階にあり、今後質問紙の改善等が望まれよう。本稿では、対処行動のカテゴリー的側面に着目し、潜在因子を抽出したが、より詳細なタイプ化の検討は今後に残された課題であろう。また、調査対象が重度の場合、結果が異なることが予想される。その場合、心理的問題の程度と対処行動の関係が本結果と符合するか否かの検討も今後の課題である。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1987-03-30
著者
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