ダウン症児と生理的精神薄弱児の図形模写能力についての研究
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概要
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本研究は、精神薄弱児の図形模写の特性を類型的方向から明らかにすることを目的として、ダウン症児群と生理的精神薄弱児群の間に差異があるかどうかについて検討した。その結果、つぎのような点が明らかにされた。(1)本研究における全課題の平均得点について、ダウン症児群と生理的精神薄弱児群の間には、統計上の有意な差はみられなかった。(2)各被験児群ごとに図形間の差を検定した結果、生理的精神薄弱児群はダウン症児群より、有意差の認められる図形の組合わせが多くみられた。このことから、生理的精神薄弱児群は斜線を含んだ図形の模写に困難性がみられた。(3)模写得点と精神年令の発達の関係を検討した結果、ダウン症児群と生理的精神薄弱児群は精神年令が長すぎるに伴ない全課程の模写得点の上がることが認められた。以上の結果を通じて、ダウン症児群と生理的精神薄弱児群の間には、模写得点で、各群の図形間の差を除いて、類似的差異は明確でないように思われる。今後、さらに、質的な面から、模写内容の分析、条件分析などの問題が検討される必要があろう。
- 1973-06-01