四国におけるツキノワグマの個体情報の収集 : 体毛をもちいた遺伝学的手法による個体識別(実践報告)
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概要
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四国のツキノワグマは生息数が数十頭以下と推定され絶滅が危惧されているが、正確な生息状況は不明である。私たちは四国におけるツキノワグマの生息情報を収集するために、ヘアートラップから回収された体毛をもとに個体識別を行った。また、それと並行して電波発信機による行動圏調査のための捕獲を行った。ヘアートラップは2003年5月〜2005年12月にかけて3台設置した。回収された体毛からDNAを抽出し、PCR法をもちいてマイクロサテライトDNA領域10遺伝子座の遺伝子型を決定した。また、アメロゲニン遺伝子領域の遺伝子型より性別を決定した。 2005年7〜9月にラジオテレメトリーによる行動圏調査のために2頭のオスと1頭のメスを捕獲した。ヘアートラップから体毛36サンプルが回収された。そのうちマイクロサテライトDNA領域の遺伝子型が8遺伝子座以上決定されたのは17サンプルであった。これら17サンプルのうち、1サンプルおよび2サンプルが、それぞれ捕獲オス2個体の遺伝子型と一致した。4サンプルは遺伝子型から捕獲されていない1頭のオスと判定された。メスの捕獲個体のものと推定される体毛は確認されなかった。これは捕獲メス個体の行動圏内にヘアートラップが設置されていなかったためと考えられた。ヘアートラップを用いることによって、捕獲することなく生息情報を収集できることが確認された。
- 日本生態学会の論文
- 2008-05-30
著者
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大西 尚樹
森林総合研究所関西支所
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大西 尚樹
森林総合研究所
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大西 尚樹
森林総合研究所関西支所:(現)森林総合研究所東北支所
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金澤 文吾
NPO法人 四国自然史科学研究センター
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金澤 文吾
四国自然史科学研究センター
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長久保 義紀
生態系トラスト協会
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金澤 文吾
Npo法人四国自然史科学研究センター
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金澤 文吾
東京農工大学大学院連合農学研究科野生動物保護学研究室
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Ohnishi Naoki
Forestry And Forest Products Research Institute Kansai Research Center
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Ohnishi Naoki
Laboratory Of Boreal Forest Conservation Graduate School Of Agriculture Hokkaido University
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Ohnishi Naoki
Laboratory Of Environmental Medicine And Informatics Graduate School Of Environmental Earth Science
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