境界の社会史 : ボルネオ西部国境地帯とゴム・ブーム(<特集>ポリティカル・エコノミーと民族誌)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,ボルネオ西部国境地帯におけるゴム栽培に焦点をあて,国家,そして更に上位の社会システムを射程に入れながら,地域限定的な歴史の考察をおこなうことを目的としている。20世紀初頭から1963年までの間に,サラワク(のちに英領直轄植民地)および蘭領西ボルネオ(のちにインドネシア共和国,西カリマンタン州)という複数の支配のマトリックスのもと,つねに国家の周縁にあり続けた境界的な社会空間を対象として,ゴム生産をめぐるマレー農民,華人商人,国家間の戦略的な拮抗の力学を検討するものである。ついては,ゴム・ブームのもとで,ゴムの密貿易および自給自足経済に傾斜していった農民社会に着目し,商品作物経済への包摂といった巨視的かつ一系的なシナリオでは捉えることのできない歴史過程を提示する。具体的事例として,1934年国際ゴム協定によるゴムの生産・輸出制限およびインドネシア共和国独立後の地域経済の混乱に起因するインフォーマル・エコノミーの形成のもと,国家の論理からすれば農業的退行とも呼べるような生業戦略を選択し,焼畑陸稲生産に特化していった沿岸部マレー農村の社会史が再構成される。
- 日本文化人類学会の論文
- 1997-03-30
著者
関連論文
- A39 マレーシア・クチンにおけるマラリア媒介蚊に対するコントロールモデルについて(第62回日本衛生動物学会大会特集)
- 歴史のなかのグローバリゼーション : ボルネオ北部の植民地期と現代にみる労働のかたち(人類学の歴史研究の再検討)
- 山下晋司他篇, 『移動の民族誌』, 岩波講座, 文化人類学, 第七巻, 初版, 東京, 岩波書店, 1996 年, 292 頁, 3,296 円
- 文化と経済のボーダーランド--ボルネオ南西部国境地帯の調査から (特集文化としての経済)
- 境界の社会史 : ボルネオ西部国境地帯とゴム・ブーム(ポリティカル・エコノミーと民族誌)
- 境界の社会史 : ボルネオ西部国境地帯とゴム・ブーム(〈特集〉ポリティカル・エコノミーと民族誌)
- 農民と往復切符 : 循環的労働移動とコミュニティ研究の前線
- 民族誌と理論 : 「高地ビルマ」をめぐる人類学小史 1954-1982
- ミンツ, シドニー W 著, 川北稔・和田光弘訳, 『甘さと権力 : 砂糖が語る近代史』, 東京, 平凡社, 1988, 434 頁, 3,600 円
- 池谷和信編著, 『地球環境史からの問い-ヒトと自然の共生とは何か』, 東京, 岩波書店, 2009年, 367頁, 2,600円(+税)