ソフトウエア産業における国際分業 : 日本と中国の事例(アジアにおける国際ナレッジ・マネジメント)

概要

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製造業の分野では、すでに多くの日本企業が中国を生産拠点にしている。これに比べてソフトウエア産業における日本と中国との国際分業はかなり遅れて始まった。とはいえすでに長い間のトライアル段階を脱して、2001 年ぐらいから本格的な取引の段階に入っている。本論では日本と中国のソフトウエア開発の国際分業について、中国のローカル・ソフトウエア企業との国際分業、とくに日本から中国への国際的なアウトソーシングに限定して、そのメカニズムと人的資源管理を、北京の2社と成都の1 社の事例を通じて検討した。その結果、中国のローカル・ソフトウエア企業は、いずれもソフトウエア開発のプログラミング工程だけではなく、仕様の確定、基本設計などの上流工程から参画していることが明らかになった。そして中国におけるオフショア開発は顧客である日本と有機的に結びついており、中国国内で完結しているわけではない。オフショア開発とオンサイト開発とは事実上表裏一体のものなのである。そのためにソフトウエア・エンジニアの移動は必要不可欠なのである。そして日本に駐在する中国人・ソフトウエア・エンジニア、つまり「ブリッジSE」は、設計段階にメンバーとして参加している。そしてウォーターフォールモデルを採りながらオフショア開発を進める時、多発する仕様変更に巧く適応できるのが、顧客に常駐し、より上流工程まで参画している「ブリッジSE」の存在であり、「オン・オフサイト(On・Off-site)開発」なのである。日本のソフトウエア企業における、中国ローカル・ソフトウエア企業ならびそのソフトウエア・エンジニアの活用の過程で、オンサイト開発とオフショア開発の間をスパイラル的に発展し、ウォーターフォールモデルを採りながら新たな修正モデルであるオン・オフサイト開発を生み出したのである。その結果ソフトウエア開発の上流工程である仕様の確定、概要設計を担うソフトウエア・エンジニアが不足している。しかし中国のローカル・ソフトウエア企業が自ら、このようなソフトウエア開発の上流工程を担当するソフトウエア・エンジニアを育成することは難しい。また中国政府はモデルソフトウエア学院を設置し、より高度なソフトウエア・エンジニアの育成を目指したが、現状ではその目標は達成できていない。プログラマ・クラスあるいはシステムエンジニア・クラスの中国人エンジニアを日本に送り、顧客の元でOJTにより「ブリッジSE」を育成しているのである。
2007-09-30

ソフトウエア産業における国際分業 : 日本と中国の事例(アジアにおける国際ナレッジ・マネジメント)

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