情報サービス産業の分業とソフトウェア技術者のキャリア・職業意識
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論は,ソフトウェア企業を情報サービス産業におけるソフトウェア開発を中心とした分業構造の中に位置づけ,以下の3つの仮説を検討した。(1)分業上の位置により労働市場の内部化の程度は異なる。(2)ソフトウェア企業の分業上の位置はキャリアパス設定の制約条件となり,教育訓練にも違いが生じる。(3)キャリア形成のあり方が,ソフトウェア技術者の職業意識にも反映する。そのために担当するソフトウェア開発工程の違い,製品・サービスの違いから,システムベンダー型,ソフトウェアベンダー型,プログラムベンダー型,要員派遣型,パソコンソフトウェアベンダー型,情報処理サービス型,の6つの企業類型を設定し,労働市場の内部化の程度,キャリアパス,教育訓練,それに職業意識の違いを検討した。その結果,各企業類型でソフトウェア技術者の平均年齢,勤続年数,転職の有無に違いが認められた。またキャリア形成もシステムベンダー型のように上流工程からソフトウェア開発を担当している企業ほどキャリアが上方に伸びている。もちろん分業構造上の位置は,キャリア形成の制約条件であり,個別企業の経営戦略,方針によってもキャリアの形成は変わりうることは言うまでもない。さらにその結果,上流工程からソフトウェア開発を担当している企業ほど教育訓練を,より積極的に行っていた。この労働市場の内部化の違いは,ソフトウェア技術者の職業意識にも反映し,内部化が進んでいるシステムベンダー型のような企業類型に勤務するソフトウェア技術者ほど現在の会社での勤務を継続する志向が強いことが明らかになった。
- 1996-04-25
著者
関連論文
- 現地取材:イスラエルのIT産業(3)バブル崩壊でITエンジニアの高賃金を見直し--イスラエルのIT人材とマネジメント
- ソフトウエア産業における国際分業 : 日本と中国の事例(アジアにおける国際ナレッジ・マネジメント)
- 中国ソフトウエア産業の未来を考える--日本との国際分業を中心として (特集 アジア諸国の国際労働移動--今、何が起こっているか)
- ロシアのソフトウェア産業におけるオフショア開発の現状と課題--モスクワの事例を中心として
- ベトナムIT探訪記 越南の龍は立ち上がるか?--ベトナム・オフショア開発の最前線を行く
- 現地取材:アイルランドのIT産業レポート 「ケルトの虎」はどこへ行くのか?(3)アイルランド・ソフトウェア産業の未来
- 現地取材:アイルランドのIT産業レポート(2)IT人材とマネジメント--「ケルトの虎」はどこへ行くのか?
- イスラエルのIT産業と人的資源管理--ソフトウェア産業を中心にして
- 現地取材:アイルランドのIT産業レポート(1)今、アイルランドのIT産業は?--「ケルトの虎」はどこへ行くのか?
- 現地取材:イスラエルのIT産業(最終回)課題は人材確保とマネジメント--イスラエル・IT産業に未来はあるか?
- 現地取材:イスラエルのIT産業(第2回)政府のベンチャーキャピタルがIT企業を支援
- 現地取材:イスラエルのIT産業(1)高度な技術力でソフト産業が急成長
- 台湾における研究開発者の職業意識・研究業績 (No.46 研究人材マネジメント : 最終報告)
- 日本の情報サービス産業の開拓者たち(最終回)日本のソフトウエア産業を確立 (株)SRA副社長 岸田孝一
- 日本の情報サービス産業の開拓者たち(5)92歳、情報サービス産業に生きる
- 日本の情報サービス産業の開拓者たち(3)株式会社アイネス会長兼社長 狩野健司--「挫折」をバネに強力なリーダーシップを発揮
- 日本の情報サービス産業の開拓者たち(1)友好的M&Aで企業規模拡大--(株)エムケーシー・スタット代表取締役社長 北川淳治
- ソフトウエア技術者における派遣・業務請負と非典型雇用 : 自社勤務との比較を中心にして
- 発展途上国における研究開発者のキャリアと職業意識・研究業績 : インドにおける公的部門と民間部門の比較を中心として (No.45 研究開発マネジメント : 日本と外国の比較)
- 情報サービス産業の分業とソフトウェア技術者のキャリア・職業意識
- 第2部 研究人材のキャリア : 研究者のキャリアと職業意識