僧帽弁形成術後人工弁輪に発症した感染性心内膜炎の1例
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概要
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僧帽弁形成術後に感染性心内膜炎を新規発症することは少なく,とくに人工弁輪感染はまれである.症例は59歳,男性.急性心筋梗塞,重症3枝病変,僧帽弁閉鎖不全症に対して冠動脈バイパス術6枝,人工弁輪による僧帽弁輪形成術を施行した.術後1カ月半後,下痢と腹痛を訴え再入院した.胃内視鏡検査後に悪寒戦慄を伴う40℃の高熱と炎症反応の亢進を認めた.抗生剤治療で一時軽快したが再燃し,各種抗生剤の追加投与で炎症所見は沈静に向った.しかし,経食道心エコー検査で僧帽弁人工弁輪に疣贅を認め,人工弁輪に発症した感染性心内膜炎と診断した.手術は再胸骨正中切開,体外循環心停止下,右側左房切開にDubost切開を加え視野展開し,感染した人工弁輪を摘出した.僧帽弁後尖基部中央に小穿孔を認めた以外は弁尖の変化は軽微であり,僧帽弁輪をdebridementし,自己心膜バンドによる再僧帽弁輪形成術を施行した.疣贅の培養は陰性で起炎菌は不明であった.術後経過は良好で,術後2年半経過した現在,感染の再発はなく僧帽弁逆流もtrivialである.胃内視鏡のような通常予防的抗生剤投与を必要としない検査であっても,人工弁輪植込み後早期の検査は避けるべきであり,止むを得ない場合は,人工弁置換術後に準じ予防的抗生剤投与を考慮してもよいと考えられた.
- 特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会の論文
- 2008-03-15
著者
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