巨赤芽球性貧血に伴い舌に腫瘤を生じた1例

概要

論文の詳細を見る
巨赤芽球性貧血は,VB12や葉酸の不足により骨髄造血細胞に核酸合成障害が起こり,細胞分裂が不完全となり,巨大な細胞が発生し,特異的な形態と機能障害により貧血を呈する疾患である。舌の腫瘤を主訴に当科を受診し検査の結果,巨赤芽球性貧血が合併したと診断された症例を経験した。巨赤芽球性貧血と舌腫瘤との関連性は低いと考えられるものの,舌の腫瘤が貧血の改善とともに縮小した興味ある症例を経験したので報告する。初診の約4ヵ月前から舌背中央部に小豆大の腫瘤を自覚するも放置。しかし消失しなかったため近医内科を受診。経過をみていたが改善せず,増大傾向を認めたため当科を紹介された。血液一般検査より大球性貧血,汎血球減少を認めたため,血液内科に対診し,VB12欠乏性巨赤芽球性貧血の診断を得た。貧血の治療を優先し,VB12製剤の筋肉内注射を約7ヵ月間,鉄剤を約6ヵ月間投与したところ経時的に貧血状態の改善を認め,それとともに腫瘤の縮小を認めた。最終的に残存した腫瘤は切除した。術後の経過は,再発は認められず良好である。
自治医科大学の論文
2007-12-01