不耕起栽培継続田への家畜糞堆肥連用が冬作期間中の無機態リン酸溶脱に及ぼす影響

概要

論文の詳細を見る
不耕起継続水田に籾殻牛糞堆肥,鶏糞ペレット堆肥を連用し,飼料用水稲とイタリアンライグラスを輪作した.1〜8作の間に,これらの畜産有機質資源で投入されたリン酸量は,それぞれ430〜1,430,80〜790kg ha^<-1>P_2O_5に上り,主に化学肥料で施肥した対照区のリン酸投入量を大きく上回った.そのため,リン酸の過剰蓄積による農地系外へのリン酸溶脱が懸念された.そこで,イオン交換樹脂を含有するカプセルを埋設するresin法を用いて,不耕起水田への堆肥連用が冬作期間中の無機態リン酸溶脱に及ぼす影響を調査したところ,以下の結果が得られた.1)不耕起栽培継続田では,堆肥連用によって可給態および水溶性リン酸,全炭素含量が表層土(0〜3cm深),ついで作土層(3〜13cm深)で多く蓄積した.両リン酸の蓄積量はリン酸総施用量に比例した.2)6作目期間中のリン酸溶脱量に関する回帰分析を行ったところ,1〜5作間および1〜6作間のリン酸投入量,表層および作土層(3〜13cm)の可給態および水溶性リン酸含量を説明変数とした場合の寄与率は高く有意であった.しかし,6作目のリン酸投入量,下層土(13〜26cm)の可給態および水溶性リン酸含量を説明変数とした場合に寄与率は低く,有意な回帰式が得られなかったことから,表層や作土層に蓄積したリン酸が溶脱に大きく関与すると考えられた.また,期間降水量が多い時期に,リン酸溶脱量は増加する傾向を示したことから,水の縦浸透に伴いリン酸が下層へと移行するものと考えられた.3)7作目前に行った一時的な耕起処理によって,表層土に蓄積していた可給態および水溶性リン酸は顕著に減少した.表層の蓄積リン酸は作土層に移動した以外に,一部は土壌と接触し難溶化したものと考えられた.そして,8作目のリン酸溶脱量は,不耕起継続区に比べて,耕起処理区では顕著に減少し,期間降水量との関係も判然としなかった.また,不耕起継続区と耕起処理区で土壌中リン酸含量が同程度であっても,耕起処理を行った試験区でリン溶脱量が少なかったことから,リン酸溶脱には表層および作土層のリン酸蓄積量のほか,土壌孔隙の発達程度が大きく関与すると考えられた.
2007-06-05

不耕起栽培継続田への家畜糞堆肥連用が冬作期間中の無機態リン酸溶脱に及ぼす影響

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク