水稲の不耕起乾田直播栽培が温室効果ガス発生に及ぼす影響

概要

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稲わらを田面表層に還元する不耕起直播栽培を継続すると,有機物の田面表層集積に伴い,土壌の還元化が進み,メタン発生量は徐々に増加する。そこで,長期間不耕起直播を継続したときのメタン発生量増加機構を明らかにするために,岡山県山陽町農業総合センター農業試験場のグライ化灰色低地水田において,不耕起直播8〜11年目のメタンフラックスをクローズドチャンバー法で測定した。同時に,水田作土層の土壌溶液中および田面水中のメタン濃度,作土層中のメタン現存量(作土全体を混和して大気中に出てくるメタンの量)を測定した。その結果,以下の結果が得られた。1)メタン発生量は,不耕起直播を8年以上継続すると,耕起移植田と同等か,むしろ多くなる傾向が認められ,その傾向は特に入水後から最高分げつ期過ぎまでの期間にみられた。この期間の水稲体の大きさは,不耕起直播が耕起移植に勝っていた。2)土層中のメタン濃度は,不耕起直播では作土表層0〜5cmで大きく,耕起移植田では作土下層で大きかった。3)不耕起直播では,稲わらが土壌表層に集積して,土壌の還元化が進むようになると,稲わらが酸化的に分解される割合が減少し,土壌表層でのメタン生成量が増加するようになる。そのうえ,不耕起直播では,メタンがより多く生成される土壌表層には過去の調査で明らかになったように根がより多く分布するため,土壌表層中のメタンが効率よく大気中へ輸送されやすい,という特徴をもつと考えられる。4)このように,不耕起直播では根が多く分布する作土上層のメタン濃度が高いうえに,耕起移植に比べて湛水初期の生育量が大きい。このことが,不耕起直播におけるメタンフラックスを大きくすると考えられた。5)一方,不耕起直播の継続により,メタンフラックスが耕起移植田を上回るようになったとき,いったん不耕起直播栽培から耕起移植栽培へ転換しても,メタンフラックスが大きくなることはなかった。さらに,耕起移植栽培から不耕起移植栽培へ再度転換しても,メタンフラックスが大きくなることはなかった。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
2005-10-05

水稲の不耕起乾田直播栽培が温室効果ガス発生に及ぼす影響

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