マレーシアにおけるシティズンシップ教育の展開と挑戦
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概要
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マレーシアにおけるシティズンシップ教育では,「市民」=「国民」「市民性」=「国民としての義務と権利」などといった文脈にあって,最終的には「マレーシアという国家の一員になる」ことが大目標として構成され,実施されている.そこで求められている市民(=国民)像は,(1)各コミュニティの一員=市民(=国民)としての責任や道徳的価値などを理解し,(2)各民族の習俗の特徴や文化・宗教の多様性を理解・尊重し,(3)「マレーシア国民」として政治・社会への参加や与えられるべき権利,果たすべき義務などを,責任を持って全うできる人材,といった要素が優先されている.その背景には,多文化・多民族の複合社会という状況下にあって,各民族が自己の共同体において活動する場合,時として,国家の枠を超えた「イスラーム」,「華人」,「インド」といったネットワークへの繋がりを見せやすいこと,その際には,マレーシアという「国家」よりも,それらの民族的なネットワークへの帰属意識への強い傾倒が生じやすく,マレーシアという国家そのものの土台が揺らぎかねない危険性を内包している.今後,マレーシアがどのようにシティズンシップ教育を行っていこうとしているのか,新科目である「公民および市民性の教育」の評価も含めて動向を注意深く見守る必要がある.
- 2007-12-20
著者
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