マレーシアと日本における環境教育の比較研究
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概要
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本研究は日本学術振興会の 2004 - 2005 年度の科学研究費補助金報告の一部として,マレーシアと日本における環境教育の調査分析を以下の 3 つの局面から行うものである.1.初等教育カリキュラムにおける環境教育の内容分析から,両国の環境教育の枠組みの概要を把握する.2.環境の視点に関連して初等教育カリキュラムに取り入れられている,仏教,キリスト教,イスラームなどのような,文化的,宗教的価値観を調べる.3.教科書分析および教材と教育方法の特徴から見た環境教育の内容:国際的な共通点,民族の伝統文化や生活慣習,国民意識の育成等に関わる価値教育の視点からみた相違,教育方法における異同,といった内容についての比較分析を行う.本研究の結果,以下のことが明らかになった.1.マレーシアは「神によって創られた環境に対して人間が果たすべき責任」についてそれぞれの小学校の各教科のカリキュラムに宗教的・文化的な価値観を導入している.このような視点は,公教育における宗教的行為が禁じられる日本では当然ながら見ることができない特徴である.2.マレーシアと日本両国とも,環境教育の推進においては類似の問題を持っている.例えば,環境教育に関する教師用ガイドブックが十分に活用されていない現状,あるいは環境教育に関して適切なカリキュラムを作成することや,適正に実施することができない学校・教師の存在などによって,子どもたちの環境教育には大きなギャップが現れている.3.両国共に,環境教育の振興のため,学校教育のようなフォーマル教育だけではなく,各地域やNGO 団体などによるノンフォーマル教育においてもさまざまな環境教育の実践活動を確認できる.このような傾向は今後ますます強まるであろうし,政府機関,学校,地域の共同体,NGO や NPOによる相互連携によって,環境教育を共同で行なっていくことになるであろう.
- 2005-12-20
著者
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