闘病記にみる病いを物語るきっかけ(第8回聖路加看護学会学術大会)
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概要
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研究の目的は,公に出版された闘病記に表現されている病いを物語るきっかけをとりまく状況を明らかにすることである。対象となる闘病記は,都内S看護大学図書館の闘病記226冊から選出した56冊である。研究の方法は闘病記の文中から書くきっかけに関する内容を抽出し,5W1H(【いつ】【誰が】【どこで】【何を】【なぜ】【どのように】)の観点で分析した内容を類型化した。結果および考察: 1.闘病記著者の性別,年齢,職業,病いの種類はさまざまであり,執筆には家族や友人・知人,仕事の仲間,医療関係職など多くの人が関与していた。著者にとって人の存在を前提とし語ることが,自分を見つめ直す営みとなっていた。2.闘病記を書くきっかけをとりまく状況の「時」は暦と病いに関するリアリティのある一回性の「時」であり,書くきっかけの「人」は家族,友人,同僚,仕事の先輩など特定な「人」であり,書くきっかけの「場」は病院,自宅など生活している「場」であった。日常・非日常を問わず生活を続ける著者の姿が示された。書くきっかけを「事象」「目的」「状況」から検討した結果,《本人に働きかける「人」の存在》《自分自身をみつめること》《看護師・医師や記者など職業人のプロとして》《死の意識に向けられたこと》《残したい「人」の存在》《生きた証・存在の意味として》《世に訴えたいこと・問いたいこと》《ワープロという「物」の存在》《告知や取材,講演など「事象」の存在》《同病者に向けられたこと》などの16カテゴリーが見出された。これらのきっかけが多様な形で重層的,複合的に起こった結果として著者は書くという行為に至っていることが推察された。今後書くきっかけの「時」「人」「場」と16カテゴリーをつなぐ,著者個人の存在を示す何ものかを探ることが次の課題として残された。
- 聖路加看護大学の論文
- 2003-06-23
著者
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