灌漑技術の普及がもたらす農村制度の変容 : スリランカの水利慣行ベトマの事例
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概要
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スリランカの稲作生産は、「緑の革命」の経験により1980年代の半ばにほぼ自給水準を達成するが、その後は灌漑開発の経済的適地の減少による水資源の効率的利用等が問題となってきている。このため、限られた土地からの農業所得向上と水資源の効率的利用のため、乾季における水分要求量の少ない米以外作物の導入が課題となっている。以上のような問題意識の下で、1997年、1998年にスリランカのドライゾーンで農家実態調査を行った。調査地域では1990年代以降、ポンプ灌漑の導入が急速に進み、乾季にはトウガラシ、タマネギ等の作付が可能となった。この研究の目的は、第1に水が希少資源である地域において、ポンプ灌漑技術が乾季の水田農業多様化へ与えるインパクトを計量的に把握すること、第2に、ポンプ灌漑技術がもたらす村の伝統的水利慣行の変容と今後の課題を明らかにすることにある。得られた結論は次の2点である。第1に、ポンプ所有による水利用可能性の拡大は、強く乾季の水田農業多様化を進展させていることがトービットモデルにより確認された。第2に、個別的水利用を可能とさせる灌漑技術の普及はスリランカの伝統的水利慣行ベトマの変容を伴うものであった。水をめぐる政府と農民の新たな協力体制作りが緊急の課題であろう。
- 2000-06-30
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