資本主義における自立の論理と不均衡(1)-貨幣の価値尺度機能をめぐって-
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概要
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宇野弘蔵の経済学体系において,原理論は資本主義の自立性を明らかにするが,その際に,社会的再生産の均衡編成は不可欠なものであるのか。むしろ,歴史的に多様な発展をみた近現代の経済過程が「資本主義」と呼ばれるのであれば,それが多様な諸条件を受け入れ,また,「純粋性」を歪めえた要因を,段階論とは別に,資本主義の原理の中にも見出すべきではないのか。本稿はこうした問題関心から,「資本主義は,原理的に不均衡と変化を常態とすることで自立する社会システムである」との命題を立て,その論証の最初の手掛かりとして,宇野の「貨幣の価値尺度」論を検討したものである。 宇野は,形態としての貨幣の価値尺度機能を,購買を通じた絶えざる価格の「訂正」の中に見出したが,本稿は,この「訂正」が,価格変動として現われる不均衡をして新たな事態への変化の契機とする一方で,社会的実体を維持する可能性を含むものでもあることを明らかにした。これを踏まえた次の問題として,実体編成は均衡価格を不可欠のものとするのかについて考察する予定である。
- 北海道大学の論文
- 2007-12-06
著者
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