資本主義における自立の論理と不均衡(2)-利潤率の均等化をめぐって-
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概要
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利潤率均等化と価値の生産価格への転化は, 原理的には, 価値法則の現実的な貫徹の仕方であると理解される。しかし, マルクスや宇野弘蔵の概念構成からみると, それらは, 資本支出と商品価値の構成要素に関する資本家的な日常意識の表現でしかない。なぜなら, 諸資本は利潤率だけを指針に運動するのであり, 資本の有機的構成や回転期間という生産条件の本質的な相違は, 分析者の関心事に留まるからである。資本家にとって各生産部門は, 最大限の利潤率を実現しうるか否かの意義しかないものであり, その意味で資本家的競争とそれによる均衡は, 資本家社会的な顛倒意識の産物であることになる。 そうであれば, 利潤率をめぐる資本の競争が齎す需給関係には, 資本家社会的な偏倚があることになる。資本家的観念として成立する競争的均衡と社会的な実体編成との不断のずれは, 価格変動と諸資本の部門間移動とを齎し, 資本家的観念は, 生産価格という顛倒した均衡価格概念を齎す。かくして「転形問題」の焦点は, この顛倒した均衡価格と実体編成との関係, それと資本主義の自立性との関係にあることになるのである。(未完)
- 2008-09-11
著者
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