前立腺潜在性癌の治療とその成績 : A Retrospective study

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前立腺肥大症として被膜下前立腺摘除術を施行した1,193例の標本を病理組織学的に再検討して,76例の潜在癌を認めた.これを癌の拡がりにより,限局性癌と瀰漫性癌に分けて,retrospectiveに検討した.1)限局性癌の標本上の長径と短径の長きの平均は5.61±2.76mm以下であり,殆んど無治療である.瀰漫性癌はこれより病巣が大きく,大部分の例は抗男性ホルモン療法を施行していた.2)生存率を前立腺肥大症,限局性癌,瀰漫性癌の3群で比較した.5年生存率は82.7%,75.3%,56.7%であり10年生存率は60.6%,69.3%,28.4%となり,前立腺肥大症と限局性癌の両者では5年,10年の生存率には有意差がなく,限局性癌と瀰漫性癌の間には5%の危険率で有意差を認めた.3)Gleasonの分類に従って限局性癌と瀰漫性癌を分類すると前者は分化型癌が多く,後者はやや未分化癌が多くなっていた.4)限局性癌群の癌死は1例のみであり,再発は癌死した例を含めて3例であった.瀰漫性癌群では癌死が4例であった.5)両群共に長期生存例が多く,瀰漫性癌にも長期生存例が思ったより多かった.以上の結果より潜在性限局性癌は無治療で経過を観察すればよいことは明らかであったが,潜在性瀰漫性癌の1部,例えばよく分化した例や余り大きくないものは無治療で経過観察すればよい例もあると考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1985-07-20

前立腺潜在性癌の治療とその成績 : A Retrospective study

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