トレーサーガスを用いた局所排気フードの捕集能力評価
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概要
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局所排気フードは,作業環境中の有害物質対策に広く使われる手段である.日本ではフードの性能評価は風速測定によって行われ,安全衛生法が制御風速という性能要件を定めている.しかし制御風速はフードの捕集能力を直接確認するものではないため,常に最適な風速値であるかは疑問である.制御風速の適否を検討するため,外付け式フードの捕集能力を,二酸化炭素をトレーサーガスにした実験室内の試験によって検証した.本研究では,フードの性能評価の指標として有害物質の発生量に対する捕集量の比と定義した捕集率を炭酸ガス濃度の測定から求めた.有害物質の捕捉点をフード開口から30cmの位置に想定した場合,制御風速を下回る吸引風速であっても,捕集率90%以上を達成できた.乱れ気流が存在しなければ,捕捉点における吸引風速が0.2m/s(制御風速の40%に相当)あれば捕集率90%以上を達成できた.吸引風速を0.2m/sに下げることで,排気風量は80%低下した.乱れ気流を0.3m/sに設定し捕集率に及ぼす影響を検証したが,その影響は乱れ気流の風向によって異なった.乱れ気流がフード中央線に対して直交する場合,乱れ気流の影響は認められず,吸引風速0.2m/sで捕集率90%以上を達成できた.乱れ気流が作業者の後方(フード中央線に対して45°方向)から吹く場合でも,影響は見られなかった.乱れ気流がフード中央線に対して135°となる場合,捕集率90%を確保するには吸引風速0.4m/sが必要であった.吸引風速の引き下げは排気経費と空調経費の節減に有効なので,トレーサー法によって必要最小限の風速を策定し制御風速の代用と出来れば,効果的で経済的な排気が可能となろう.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 2007-09-20
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