社会調査にみる<女中>
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,1930年代に東京と横浜でおこなわれた2つの社会調査から,住み込み女中の実態を明らかにしようとする試みである。女中の多くは農村出身の10代後半から20代前半までの未婚女性で,小学校程度の学歴を持つ。就職の経路として最も多いのは親戚や知人の紹介で,民間・公共の紹介所で仕事に就いた者は少ない。職務限定で雇われている者は少数にすぎず,大半は座敷仕事も台所仕事も何でもこなす,いわゆる「一人女中」である。定まった休みのある者は半数以下で,ある場合も不定期である場合が少なくない。女中の属性や就労状況を女工と比較すると,年齢や学歴の構成は変わらないものの,就労条件は大きく異なる。すなわち,月給30円以上の者は女中では1%にも満たないのに対し,女工では半数近くを占め,公休日も女工の場合はすべて月極で定められており,大半は毎週もしくは隔週で休みがある。就労理由についても,女工のほとんどは「家計補助」「自活」など経済的な必要に迫られ働いているのに対し,女中の場合,過半数が「嫁入支度」「行儀見習」などの理由をあげている。「結婚を目標にした結婚準備のための修業」。このような意識が強いからこそ,安い給料で休みがなくても,何とか我慢できるのであろう。日本の家庭女中を考えるさいには,この点を見逃すことができないのである。
- 2005-03-31
著者
関連論文
- 育ち合いの子育て支援活動 : 親子ひろば「はらっぱ」を事例として
- 「派出婦」の登場 : 両大戦間期におけるイメージの変容
- 社会調査にみる
- 地域ぐるみの子育て支援活動 : 三木市「人の目の垣根隊」を事例として(スポーツマネジメント)
- シニア世代による子育て支援の実践 : 加古川市「にこにこオープンルーム」を事例として
- 1950〜60年代におけるイメージの変容 : 「家事サービス職業補導」「ホームヘルパー養成講習」をめぐって
- 愛国婦人会のをめぐる社会事業 : 両大戦間期を中心に