積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : IX.雪害を低減する牧柵のコスト
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概要
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低コストで雪害の少ない牧柵を設計するために,4つの牧柵を3年間放牧利用し,試験した。牧柵I型は慣行型で柵柱間隔が4m,4段張りの有刺鉄線を針金で柵柱に留めた。牧柵II型は柵柱間隔が4m,4段張りの有刺鉄線を割りピンで柵柱に留めた。牧柵III型は柵柱間隔が9m,線間隔保持材間隔が3m,有刺鉄線3段張りとした。牧柵IV型は柵柱間隔が25m,線間隔保持材間隔が5m,有刺鉄線3段張りとした。架線の緊張はI・II型では人力で20kgf,III・IV型では緊張器を用いて100kgfとした。牧柵の維持管理は,I・II型では冬期間そのままとし,III・IV型では退牧後に架線と線間隔保持材とを倒伏し春に復元した。これら4つの牧柵について脱柵状沢,建設費,放牧後の構造変化,雪害の状況および3年間の維持管理費を調査した。放牧牛の脱柵は試験牧柵にはなかった。最深積雪は1986年2月に148cm,1987年2月に90cm,1988年2月に80cmであり,積雪沈降荷重が試験期間中に架線に作用し,I・II型では架線に断線や弛み,針金やピンが壊れる雪害が生じた。III・IV型では架線と線間隔保持材とを倒伏したので雪害はなかった。牧柵コストの比較から,建設費は柵柱間隔を広くし柵柱数を減らせば低減でき,牧柵の維持管理費は雪害のないように架線と線間隔保持材とを倒伏することで低減できた。したがって,積雪寒冷地ではIII・IV型のような"lay-down(倒伏)型"牧柵が勧められる。この倒伏型の牧柵システムは平坦地では便利であるが,起伏傾斜草地で有刺鉄線を使用することは刺が柵柱に引っ掛かり緊張が困難となる。
- 日本草地学会の論文
- 1990-01-31
著者
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