積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : VIII. 傾斜地の牧柵の越冬試験
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
牧柵の雪害対策を検討するため,北西向きで傾斜15度の傾斜草地(青森県野辺地町)に各種の資材や構造をもつ牧柵を設置して越冬試験を行った。地盤支持力は深さ60cmまで最大でも15kgf/cm^2と比較的軟らかかった。標準的な牧柵構造は山側にコーナー柱を設置し,コーナー角度が90度,4mの柵柱間隔,コーナー柱を挟んで支柱付きの端柱まで2スパンずつ,架線高さが地上40,70,100,130cmの4段有刺鉄線張り,根入れ深さが45cmであり,架線は2個所で針金で完全に固結した。その他設置条件を変えたものを含め合計13種類の試験牧柵を配置した。越冬後に牧柵構造変化を測定した。1)試験期間中の最深積雪深は山側で90cm,谷側は125cm(推定)であった。1985年3月中旬の積雪密度は山側が平均で0.49g/cm^3,谷側が0.36〜0.55g/cm^3で融雪の時期であったが,この時点で架線の弛みやコーナー柱の傾きが既に見られた。同じ傾斜度でも風向や傾斜地の山側・谷側で積雪深が異なることを牧柵の配置設計に留意すべきである。2)一冬で全てのコーナー柱は谷側に傾いたが,この傾きは積雪が深いほど増大する傾向がみられた(P<0.01)。とくに山側に配したコーナー柱は傾きながら抜け出しが多く,支柱を付けたものにも抜け出しがあった。等高線に平行な方向で設置したコーナー柱も谷側に大きく傾いた。また,コーナー柱は根入れが10cmでも深く,断面形状が大きい主力柱ほど,コーナー角度が広いほど安定した。3)架線は鉛直下方向の積雪荷重および斜面と平行な方向への積雪移動荷重によって引っ張られて,柵柱を傾かせながら融雪後に弛みが生じる。この弛みは積雪が深いほど増大する傾向が認められ(P<0.01),積雪の範囲内では架線位置の高いものほど弛みが多かった。4)牧柵雪害の対策としては高張力架線とするが,有刺鉄線ではなく補修の容易な鋼線が望ましい。荷重の掛かるコーナー柱や端柱は断面形状の大きな強度のあるものを使用すべきである。また,牧柵の設置方法ではコーナー角度を狭くせず,傾斜面では山側と等高線に平行な方向にコーナー柱を設けないようにすべきである。
- 日本草地学会の論文
- 1988-10-31
著者
関連論文
- 台湾と日本の学生に好まれる牧柵景観
- 牧柵施工機の開発
- 8-5 牧棚施工機械の開発に関する研究 : 4. 不整地走行車搭載型機械による牧棚施工の作業性の改善
- 10-4 牧棚施工機械の開発に関する研究 : 開発した機械装置による牧棚施工作業の軽労化
- 10-3 牧棚施工機械の開発に関する研究 : 手作業による棚柱打設作業歩掛りの一考察
- 9-11 牧柵施工機械の開発に関する研究 : 1. 柵柱の打設回数と引抜荷重
- 牧場景観の評価 : 1. 牧場景観の選好特性と評価手法の検討
- 積雪寒冷地における繁殖肉用牛の無畜舎越冬時の飼料摂取量と増体重
- 9-12 南西諸島における周年放牧利用草地確立に関する研究 : 牧養力向上に関する試験
- 9-18 牛の行動特性からみた放牧施設配置 : 沖縄県南西諸島で周年放牧飼養をめざして
- 9-16 省力管理のための放牧施設配置 : 沖縄県南西諸島で周年放牧飼養をめざして
- 6-14 南西諸島における周年放牧利用草地確立に関する研究 : 暖地型放牧草地における寒地型草種の追播効果
- 酪農地域における多面的機能と景観面からの環境整備
- 3-38 リサイクル素材を活用した牧柵の技術開発 : 3. 各種牧柵柱の曲げ強度特性と廃プラ利用の新型牧柵柱の試作
- 3-37 リサイクル素材を活用した牧柵の技術開発 : 2. 積雪地帯の牧場における電気牧柵の牧柵柱破損の実態
- 8-1 リサイクル素材を活用した牧柵の技術開発 : 1. 既存牧柵柱の強度特性比較と廃プラスチック牧柵柱の耐候・耐寒性
- モミガラ炭添加給餌が夏季における産卵鶏の糞臭気、産卵および卵質に及ぼす影響
- 牧場景観における施設の色彩評価 : 牧場施設の色彩評価
- 農道における自転車道の必要性とその色彩による景観評価
- 地鶏の生態を考慮した有機養鶏用可搬式鶏舎の開発とその飼育効果(日本家畜管理学会・応用動物行動学会2008年度春季合同研究発表会)
- セラミック炭および燻炭給与が鶏の産卵成績およびふん臭気に及ぼす影響
- 廃棄水路製品からの再生粗骨材を使用した再生コンクリート製品の特性
- 廃棄コンクリート製品のリサイクルと再生骨材の有効利用
- もみ殻炭給与が鶏の産卵成績およびふん臭気に及ぼす影響
- 沖縄県八重山諸島における放牧施設の現状と更新技術
- GISを利用した農業水利施設の情報管理システム
- 石多発地帯における農用地整備のための連続石礫破砕工法
- 流動化処理土の新しい製造法
- 第7回建設材料・部材の耐久性に関する国際会議に参加して
- 積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : 10.低コスト牧〓に使用されるアングル鋼の実用性
- 草地利用のための牧柵設計 : VI.放牧牛の柵外採食行動が牧柵の有刺鉄線に及ぼす影響
- 積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : IX.雪害を低減する牧柵のコスト
- 草地利用のための牧柵設計 : IV.架線間隔が放牧牛の頭出し行動に及ぼす影響
- 草地利用のための牧柵設計 : III.柵柱間隔が放牧牛の頭出し行動に及ぼす影響
- 国内情報2 最近の牧柵事情
- 9-15 完全倒伏型牧〓の試験施工
- 草地利用のための牧柵設計 : V. 育成牛群に対する有刺鉄線牧柵の隔障機能
- 積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : VII. 平坦地の牧柵の越冬試験
- コンクリート廃棄物の粗骨材への再利用
- 放牧施設に関する技術開発とその実証的研究(日本草地学会賞受賞講演) (平成6年度日本草地学会大会受賞公演および発表会講演要旨集)
- 積雪寒冷地における放牧施設に関する研究 : VIII. 傾斜地の牧柵の越冬試験
- 1126 コンクリート製品の表面劣化に及ぼす振動締固め時間の影響(耐久性)