アズマネザサ型草地における土壌微生物バイオマス
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概要
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アズマネザサ型草地の特徴を明らかにする目的で,栃木県那須町池田牧場のアズマネザサ(Pleioblastus chino Makino)が優占していたA区とオーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)が優占していたC区で,土壌の性質と平板法による微生物数並びに直接検鏡法による微生物バイオマスを調べた。土壌中に可給態リン(Bray No. 2)が乾土100g当り4.9〜9.6mg存在していたことと硝酸態窒素が検出されなかったことはA区とC区で共通していた。しかし,土壌中の有機物量(粒径2-0.1mm)は乾土100g当りA区では9,190mgだったのに対して,C区では14,900mgと多かった。平板法による乾土1g当りの全細菌数はA区では222〜297×10^6,C区では554〜739×10^6,放線菌数はA区では18〜55×10^6,C区では36〜61×10^6,糸状菌菌数はA区では53〜91×10^4,C区では103〜212×10^4で,いずれもA区よりもC区で約2倍計数された。直接検鏡法による微生物バイオマス(乾物重)は,糸状菌が89%,細菌が11%を占めており,1m^2・深さ10cm当りA区では189〜197gだったのに対してC区では232〜255gであった。2つの区での微生物バイオマスと平板法の菌数の差は土壌中の有機物量の差に対応していた。こうした微生物バイオマスの値から,アズマネザサ型草地として安定していたA区の微生物バイオマス中に蓄えられている養分量を計算すると,1ha・深さ10cm当り窒素が94kg,リンが80kg及びカリウムが71kgとなった。これらの結果は,この草地では無機態窒素が草の制限因子となっており,微生物菌体から放出される窒素量が草の生育にとって重要であることを示していた。
- 日本草地学会の論文
- 1989-03-31
著者
-
近藤 煕
草地試験場
-
沢田 泰男
草地試験場生態部
-
岡野 正豪
草地試
-
近藤 煕
草地試験場生態部:(現)北海道立根釧農業試験場
-
岡野 正豪
草地試験場
-
沢田 泰男
草地試験場:(現)農業環境技術研究所
-
沢田 泰男
草地試験場
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