飼料価値に及ぼす病害の影響 : V. 黒さび病発生草地において坪刈したオーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)の飼料成分の変化
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概要
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草地での黒さび病の発生がオーチャードグラスの飼料成分に及ぼす影響を知るために,自然発病草地で坪刈りを実施し,飼料成分分析実験を行った。同一圃場の多発病区と少発病区の坪刈り試料の生草重は,それぞれ800g,1128g/m^2で,多発病区は少発病区の約7割に減少した。このうち,高い罹病程度を示すIII〜V(健全:0〜甚発病:V)葉の生草重の占める割合は,少発病区が12.3%,多発病区が50.6%であった。乾物重は両区で違いがなかった。少発病区の乾物消化率は66.5%であるのに対し,多発病区では60.6%と低下した。飼料成分は少発病区を100とすると多発病区の粗蛋白質70.3,粗脂肪82.1,還元糖67.1で,特に粗蛋白質と還元糖の含有率が低かった。逆に灰分,粗珪酸,繊維成分,リグニンは,いずれも110以上で,増加がみられ,特に粗珪酸とリグニンの含有率が多発病区で高かった。無機成分のナトリウム,マンガン,銅の含有率は多発病区で低く,カリウム,マグネシウムと鉄は逆に高かった。以上のごとく黒さび病の多発生はオーチャードグラスの乾物収量には大きな影響は与えなかったが,乾物消化率を低下させ,さらに飼料成分として重要な粗蛋白質,粗脂肪,還元糖等の含有率を低下させ、逆にリグニン,粗珪酸,繊維等の含有率を高め,飼料としての品質を低下させるものと解される。
- 1987-12-31
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