子どもの遊びにおけるエピソードの利用と社会的相互行為の境界構成
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
子どもの遊びの特徴として、ダイナミックな相互行為境界の構成が挙げられる。記述された遊びのやりとりをシークエンスに沿って分析する方法がしばしば採用される。シークエンスは会話の参加者間で行われる発話の交換であり、それは相互行為の進行にとって特定の機能を果たすため、トランスクリプトは単一の焦点を持つ会話や行動のやりとりとみなされてしまう。エピソードは相互行為の境界がどのように構成されるのかという問題に非常に重要な意味を持つと考えられる。本論文ではエピソードが遊びの中でどのように利用されているかを検討した。エピソードは単一の主題によって切り取られるひとまとまりの相互行為であるが、遊びの事例を検討した結果、必ずしもそうではないことがわかった。複数の主題が連続して継続される場合もあるし、またその主題が潜在的なこともある。このようなエピソードの複雑な構造が相互行為の境界が変動する契機として重要な関与をしている。もうひとつの特徴は、過去の一時点に位置づけられるエピソードを現在進行中の相互行為に取り込むというやり方である。このように相互行為の資源として取り込まれるエピソードを単位エピソードと呼ぶ。遊びの中では単位エピソードは単なる回想の対象ではない。それは冗談や悪ふざけの材料であり、さらには単位エピソードの改変を通じて参加者の社会関係への影響を及ぼすものにもなりえる。単位エピソードを利用することで、相互行為の枠組みは大きく変化する。それは相互行為における開放性の問題ともかかわってくる。開放性は社会的なものと空間的なものに分けることができる。前者は遊びが通常よりも広い人間関係を潜在的に受け入れる傾向があることを意味する。後者は間違いの少ない相互行為を営むには不利なほど拡大した範囲で遊びが行われることを意味している。相互行為としての遊びに影響を与える単位エピソードと開放性の関係を明らかにすることが今後の課題である。
- 西南女学院大学の論文
- 2007-02-28
著者
関連論文
- 子どもの遊びにおけるカテゴリーの達成
- 小児がん寛解・治癒例の学校生活の実態からみた学校生活支援の方法的諸問題
- 子どもの遊びにおけるエピソードの利用と社会的相互行為の境界構成
- 遊びをどのように記述するか : 焦点化された相互行為と周辺的相互行為の関係(保健福祉部福祉学科)
- 遊びにおけるルーティンの構成
- 看護教育における効果的な授業の研究 : 実技学習での注視・身振り等の提示効果をめぐって
- 明治後期の小学校における戦争遊戯の成立過程
- 庄屋拳の記号化過程 : 紙面子との関連を中心に
- 看護教育の効果的な授業研究 : 実技学習における「身振り」行為等の効果に着目して
- 看護教育の効果的な授業研究 : 実技学習における「注視」行為等の効果に着目して
- 精神分裂病者の生活時間に関する調査研究
- 精神障害者の日常生活行動に関する調査研究
- ジャンケン遊びにおける三すくみとシンボル
- 遊びの境界を構成するもの : 隙間的遊びに関する事例を通して
- 遊びの構造に見られるニューメディアの影響
- 「遊び」理解のために : 社会化論との接点を求めて
- 社会的相互作用における「いい子」の社会的構成
- 社会化論の再検討 : 相互作用モデル構築のために
- 日中比較授業分析 : 相互作用プロセスに注目して
- 生きがいの社会学的分析の可能性