日本における図書館の基本原理 : 羽仁五郎の発言に関する批判的考察
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概要
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図書館は,その設置母体の如何にかかわらず,公益性の高い非営利組織であり,社会共通資本であると見なされてきた。特に,日本の図書館は第2次世界大戦後,国立国会図書館を代表として,その社会共通資本としての機能を維持してきた。その機能は多岐に渡るが,最も重要な点は,知的サービスを基盤とした国民の福利への貢献にあり,それは「真理が我等を自由にする」という,国立国会図書館本館に掲げられた文言に代表されたものであると言えよう。この文言は,日本の図書館一般に通じる原理として理解され,戦後日本の図書館の発展に大きな影響を与えてきた。その起源は,国立国会図書館法を起草する際に,歴史学者で参議院議員であった羽仁五郎が前文を挿入したことに端を発している。また,その意味は,図書館が利用者への公平な知識情報への利用可能性とアクセス可能性を確保することにより,健全な民主主義社会の基盤となるものであると解釈されることが多い。21世紀に入り,日本における図書館などの社会共通資本に関する考察は,PFI(Private Finance Initiative)の導入などに代表される経営の効率化などの外郭的な側面に関して,大きな進展を示してきた。しかし,その反面,図書館に限った指摘を行うとすれば,その根幹を構成する基本原理の部分に関しては,戦後の米国による図書館使節団との共同作業において羽仁五郎がその原理を提示して以来,これを根本から問い直すという知的作業が行われることが僅かに止まっている。そのため,本稿は知識と呼ばれる概念に対する考察を基盤として,日本の図書館を支えてきた「真理がわれらを自由にする」と呼ばれる基本原理に対する検討を試みている。
- 2006-12-31
著者
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