経直腸的超音波断層法よりみた集団検診症例における前立腺触診所見の評価

概要

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1976年から当教室で施行してきた,55歳以上の男子の前立腺集団検診において,一次検診で触診および超音波断層法の両者が行ってある1,683例を対象として,前立腺の触診所見と超音波所見を比較検討した.その上で触診あるいは超音波所見が癌や肥大症の診断にどのように関与しているか,あるいはどの程度の関連性や有用性があるのかなどについて検討してみた.その結果,触診で癌を疑う根拠として最も多い所見は硬く触れるということであった.しかし,硬く触れた症例のうち癌は僅か6.7%に過ぎなかった.癌でないのに硬く触れた症例としては,正常前立腺や肥大症に結石を合併していたものが56.2%認められた,触診では結石による硬さと癌の硬さをまったく区別できなかった.また触診で左右非対称あるいは境界不鮮明に触れることと,癌の診断の間には関連性が薄く,これらの所見が癌の特徴的な所見とはいえなかった.触診および超音波による癌の診断率については,sensitivityは両者とともに100%,またspecificityはそれぞれ93.7%,91.3%で,今回の検討対象に関するかぎりでは両者の間に大差はなかった.しかし,触診で癌が疑われた症例は,癌が否定されれば大部分は正常か,または前立腺結石であるのに対して,超音波で癌が疑われたものは,癌が否定されても69.8%は治療の必要な肥大症であった.また触診による肥大症の診断率はsensitivity64.5%,specificity82.5%で,超音波と比べ非常に悪かった.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1988-08-20

著者

板倉康啓
京都府立医科大学泌尿器科学教室

経直腸的超音波断層法よりみた集団検診症例における前立腺触診所見の評価

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