前立腺の物理的諸性質に関する実験的研究 : 第3報 : 仮想円面積比と理論的前立腺内圧

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われわれは,今回,正常前立腺組織42検体を対象として,第2報と同様の方法を用いて引張り実験を行った.得られた実験結果と第2報における病的残尿を来している成熟肥大症30症例のそれらを比較検討し,以下の知見を得た.すなわち,正常前立腺組織,肥大症外科的被膜両者の弾性率はほぼ等しかった.しかし,引張り強度,伸び率は,正常前立腺組織の方が外科的被膜より有意に小さかった.つまり正常前立腺組織は伸びにくく脆い性質をもち,外科的被膜は伸びやすく強靱な性質をもつことがわかった.一連の前立腺組織の引張り実験の結果から,正常前立腺が腺腫の成長とともに肥大症前立腺になっていく過程は,ゴム風船がふくらんでいく過程にシミュレーションできる.Laplaceの法則を用いて,7つの異なる仮想円面積比の前立腺シミュレーションモデルの理論的内圧を求め,これと仮想円面積比との関係を検討した.そして仮想円面積比が0.75よりも低い値では前立腺内圧は小さく排尿障害はない.しかし,腺腫の成長に伴って仮想円面積比が高くなり,0.75の境界を越えると,急に前立腺内圧は大きくなり排尿障害が強くなることがわかった.すなわち,前立腺肥大症の排尿障害における仮想円面積比理論の正しいことが物理学的に裏付けられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1986-09-20

前立腺の物理的諸性質に関する実験的研究 : 第3報 : 仮想円面積比と理論的前立腺内圧

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