わが国の食飼料供給に伴う窒素の動態に基づく環境負荷発生構造の解析
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概要
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1)わが国の食飼料供給に伴う窒素動態における国内作物生産を持続的に保証する窒素補給を窒素の作物吸収率により求め,化学肥料と廃棄物の農地還元利用による窒素補給を介して土壌の窒素収支と結びつけ,廃棄物の処理負荷および農地からの水系への負荷を構造的に把握するモデルを作成した.2)1982,1987,1992,1997年の4調査年における窒素動態を同モデルで分析すると,農地還元利用推定量は各調査年において366,418,490,482であり,農地からの溶脱負荷は国内作物生産の規模と連動して491,513,499,458と推移した.環境総負荷はこれらを反映して1,823,1,981,1,941,1,862と推移し,1982〜1987年にかけて増加するものの,それ以降は低下し,1997年には対1982年比で5%の増加にとどまった.3)環境総負荷の低減目標として国内農業生産に伴う窒素負荷がないと想定した場合のCAEの試算値,MCAEを求め,各調査年においてCAE=MCAEとなるときの廃棄物肥料利用率を求めたところいずれの調査年でも68〜69%となった.この値をわが国の窒素負荷構造下における「環境保全型農業実現のための目標廃棄物肥料利用率(TSFR)」として提案する.4)作物吸収率を0.5から約0.52〜0.53に向上させると,各調査年で化学肥料の使用を10%減ずることができる.環境負荷総量は化学肥料への依存度が相対的に高い1982年で3.5%減少し,1997年では2.5%にとどまった.5)化学肥料を10%減じ,農地還元利用を増やして窒素補給をみたす想定では1982〜1992年で,環境総負荷が約3.5%低下した.6)調整水田(1994年,530km^2),自己保全管理水田(同,640km^2)など作付をしていない水田1,260km^2で飼料用イネを栽培し,その養分供給を廃棄物の農地還元利用でまかなうことを想定すると,国内作物生産は増加するが,環境負荷総量はいずれの調査年においても1.3〜1.4%低下した.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 2006-12-05
著者
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