日本人母乳の脂肪酸組成に関する研究

概要

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最近の日本人の母乳中の脂肪酸組成を検討するため,同一授乳婦28名から得た3泌乳期の母乳を用いて,28種類の脂肪酸を同定,定量した。さらに,授乳婦の食事内容が脂肪酸組成に与える影響について検討した。その結果,以下のとおりであった。1.飽和脂肪酸の比率は3泌乳期で有意な変化はなかったが,カプリン酸(C10:O)およびステアリン酸(C18:O)は,分娩後5日目に比べて分娩後1ヵ月目と3ヵ月目で,有意に増加していた。一方,飽和脂肪酸の55%前後を占めるパルミチン酸(C16:O)は有意に減少していた。2.一価不飽和脂肪酸の約85%を占めるオレイン酸(C18:1n-9)は,分娩後5日目に比べて分娩後1ヵ月目と3ヵ月目で,有意に増加していた。その結果,全体として母乳中の一価不飽和脂肪が有意に増加していた。3.多価不飽和脂肪酸では,n-6系脂肪酸に泌乳期の経過に伴う有意な変化は認められなかったが,n-3系脂肪酸は,分娩後5日目に比べて分娩後1ヵ月目と3ヵ月目で,有意に減少していた。n-3系脂肪酸は,過去の報告例と比較して,全体的に低い傾向にあった。4.多価不飽和脂肪酸を多く含む食品群別の1週間の摂取頻度と母乳中の多価不飽和脂肪酸組成との間に正の相関が認められた。
日本母性衛生学会の論文