中間集団論 : 社会的なるものの起点から回帰へ(<特集>中間集団の問題系)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では、デュルケムの中間集団論およびその受容をめぐる人類学史を概観したうえで、今日の人類学が「社会的なるもの」を再考するうえでの発見学的モデルとして、一世紀の時を経た「中間集団」概念の理論的な加工作業が試みられる。デュルケム社会学の底流には、産業資本と福祉国家生誕の時をむかえた20世紀転換期フランスの「社会」危機に対し、彼のいう二次的集団、とりわけ職業集団の再編成を軸に道徳的個入主義と有機的連帯の育成を促そうとする社会工学の意図があった。だが、その後デュルケム理論の継承を図ったイギリス社会人類学は、自社会の変革をめぐる彼の政治規範を理論から漂白する過程で、市場の対概念であるモラルの思想史的含意、ならびに「未開社会」が植民地帝国下の入工的な中間集団たる現実を忘却していった。起点からの分岐と忘却を経た入類学に社会への視線が回帰する時期とは、脱スターリン化から「1968年革命」、福祉国家危機論の台頭へと到る、社会科学全般のパラダイム転換期でもあった。社会的なるものを主題とした人類学的考察の今日における顕著な増加を、パラダイム転換第二波の徴候とみるにせよ、モラル・エコノミー論争の70年代から地続きの現象とみるにせよ、社会介入型国民国家の生誕から問い直しへと到る歴史の一サイクルが閉じつつある今、19世紀末の社会工学を参照点とする「社会」再考の試みには、相応の意義が見出せよう。
- 2006-06-30
著者
関連論文
- 中間集団論 : 社会的なるものの起点から回帰へ(中間集団の問題系)
- 序 : 中間集団の問題系(中間集団の問題系)
- アマドゥ・クルマの追悼集会
- だれが世界を翻訳するのか : AA研棟竣工記念シンポジウム「だれが世界を翻訳するのか-アジア・アフリカの未来から」基調報告(平成14年6月29日)
- 間大西洋アフリカ系諸社会における20世紀の比較研究
- 太田好信著, 『叢書文化研究 1 民族誌的近代への介入 : 文化を語る権利は誰にあるのか』, 京都, 人文書院, 2001 年, 281 頁, 2300 円(+税)
- 歴史主体の構築技術と人類学 : ヴィシー政権期・仏領西アフリカにおける原住民首長の自殺事件から(統治技術から人類学へ)
- 旅と表象の比較研究
- 旅と表象の比較研究
- 渡辺公三著, 『現代思想の冒険者たち 第 20 巻レヴィ=ストロース-構造』, 初版, 東京, 講談社, 1996 年, 342 頁, 2600 円
- 音・図像・身体による表象の通文化的研究
- 吉田憲司著『仮面の森 : アフリカ・チェワ社会における仮面結社、憑霊、邪術』
- 日本アフリカ学会第42回学術大会記念シンポジウム報告 : 変貌するアフリカ・変貌する諸学との対話―生態入類学、47年後の意昧
- アフリカ研究の回顧と展望 : 文化人類学・社会人類学
- リベリア内戦の展開
- 「アフリカの心とかたち」川田順造