C/C 複合材の耐酸化性向上に関する研究
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概要
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SiC コーティングはC/C 複合材および黒鉛材の耐酸化膜として用いられるが、コーティングにクラックあるいはピンホール等の損傷が発生した場合には、コーティングおよび炭素基材の両方が急激に消耗するため、その耐久性は不十分なものとなる。本研究では、この急激な消耗について化学平衡計算を用いた検討によってその消耗のメカニズムを推測し、加熱温度を変えた評価試験を実施して検証を試みた。更に、いくつかの酸化耐久性向上の試みを行い、試作したテストピースを1773〜1973K(1500〜1700℃)の空気中で加熱してその効果を調べた。化学平衡計算の結果から、1800〜1900K の温度域からSiC の過大消耗が始まることが示唆された。このことは1973K および1773K の空気中で行った加熱試験結果との比較によって確かめられ、耐久性の観点からはSiC コーティングで被覆したC/C 複合材の使用温度上限を約1773K 程度に抑えることが望ましいことが分かった。C/C 複合材を被覆したSiC コーティングに発生するクラックを防止するための試みとして、コーティングと基材の間に中間層を設けたテストピースおよびC/C 複合材の表層付近にSiC 繊維を混紡したテストピースを試作し、1973K の空気中で加熱してその効果を確かめた。この方法によってコーティングに発生するクラックを完全に防止するには至らなかったが、中間層を設け同時にSiC 繊維を混紡することによって、10〜20hr の加熱で消耗量を73〜78%低減することが出来た。耐酸化性が向上した理由は、中間層および混紡SiC 繊維に由来するシリカがSiC コーティング損傷部のシール効果を持続させる働きをしたためと考えられる。常温空気中でシリカ前駆体ポリマーであるペルヒドロポリシラザン(Perhydropolysilazane, 略称PHPS)から形成されるシリカを利用してSiC コーティングに発生したクラックの封止を試みたテストピースを試作し、1773Kの空気中で加熱してその効果を確かめた。PHPS ポリマーを用いたクラック封止処理によって、2D-C/C 複合材テストピースの消耗量を約30%低減することが出来た。
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
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小野 文衛
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部角田宇宙センター複合推進研究グループ
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竹腰 正雄
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部角田宇宙センター複合推進研究グループ
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植田 修一
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部角田宇宙センター複合推進研究グループ
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植田 修一
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部複合推進研究グループ
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植田 修一
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部
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竹腰 正雄
宇宙航空研究開発機構(jaxa)
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小野 文衛
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
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