中国におけるGAP導入の取り組みに関する一考察
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概要
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本稿はEurepGAPを中心にGAPの世界的な主な取り組みを概観した上で,GAPの定義,ChinaGAPの導入経緯,認証制度の枠組みと認証の現状を明らかにし,その輸出促進の目的を検証した.GAPは農業生産段階においては,食品安全,環境保全,農業生産者福祉,動物福祉などの役割を果たすことになるが,流通段階においては立場によって自国農業を守る役割と農産物輸出を促進する役割に分れる.ChinaGAP作成の背景,内容および認証推進の現状から,その直接な目的はEU市場の輸出促進にあり,近い将来においても輸出促進はその最大な目的であるといえる.しかし, ChinaGAPとEurepGAPの同等性認証,JGAPとEurepGAPの同等性認証が進んでいる中,ChinaGAPのポジティブリスト制度への影響,そして中日農産物貿易への影響について注目していきたい.さらに, 日,中両国GAPのEurepGAPへの同等性認証の内容を比較検討し,ヨーロッパ規範とアジア規範との共通性と相違性にも着目したい.とはいえ,ChinaGAPの目的は輸出促進のみではない.北京オリンピック認証認可小委員会では,オリンピック食品の安全を確保するため,農畜産物の生産基地においてChinaGAPを主とする認証を,食品生産企業においてHACCP認証を実施することをオリンピック食品の提供要件としている.また,既に述べたように輸出の少ない乳業企業も20社ほどChinaGAP認証を取得している.これらのことから,長期的にはChinaGAPは,中国国内の食品安全,環境保全,動物福祉および従業員の福祉などの面においても大きい役割を果たしていくと考える.ChinaGAPは一般農家に対しては段階的に普及を行うため,EurepGAPと同等性認証を持とうとする一級認証のほか,二級認証も設けている.しかし,認証制度の普及・浸透には市場でのインセンティブが非常に重要であるため,市場に参入しにくい中国の一般的な零細自給農家まで如何にChinaGAPを浸透させていくかが大きな課題である.その際,クロス・コンプライアンス経営が重要なヒントを与える.今後の課題にしたい.In this paper, we clarified the introduction process, the frame and the certification of the present conditions of ChinaGAP, after having arranged a main global action of GAP especially on EurepGAP. It is inspected that China rise its exportation through ChinaGAP. From the background introduction, the contents and the present conditions of the certification promotion of ChinaGAP, it is clear that ChinaGAP 's direct purpose is to promoting exportation to the EU markets, and the export promotion could be the maximum purpose in the near future. As ChinaGAP is ready to start EurepGAP benchmarking procedures, and JGAP is also ready to start it; in the future, it is necessary to pay attention how ChinaGAP influence farm products trade between China and Japan. In addition, it is very important spreading a certification system because of the incentive in markets; therefore, there is a big problem how to let ChinaGAP seep the Chinese general small-scale self-support farmhouses who have many difficulties for entering to markets.
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