上皮性皮膚腫瘍におけるMast cellの浸潤に関する研究
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概要
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Mast cellと上皮性皮膚腫瘍との相互作用を検索するために腫瘍問質に浸潤するmast cellの数を計測し次の結果をえた。(1)正常皮膚(剖検22例)におけるmast cellの浸潤数は,真皮乳頭層で平均27,500/mm^3,真皮網状層では6,700/mm^3であった。(2)基底細胞癌31例,脂漏性角化症21例,Bowen病13例,有棘細胞癌15例の計80例について腫瘍問質に浸潤するmast cell数を数えたところ脂漏性角化症及びBowen病の平均は各々29,400/mm^3,26,200/mm^3と,正常皮膚乳頭層と大差なかった。これに対し有棘細胞癌では6,100/mm^3と減少を示し,一方基底細胞癌では89,800/mm^3と著明な増加を示した。(3)上記の結果をMann-WhitneyのU検定を行うと,有棘細胞癌と正常例,基底細胞癌と正常例との間には有意の差を示した。(4)上記症例の一部について酵素抗体法によるIgE免疫染色とtoluidine blue染色の重染色を行い,メタクロマジア陰性の脱顆粒したmast cell(M^--mast cell)とメタクロマジア陽性mast cell(M^+-mast cell)の割合(M^--mast cell/M^+-mast cell)を検索したところ正常例,脂漏性角化症,基底細胞癌,Bowen病ではM^--mast cellの占める値が0.2〜0.43の範囲に入るのに対し,有棘細胞癌では1.96と高値を示した。以上より有棘細胞癌においては,腫瘍の浸潤性発育とmast cellの脱顆粒との関連が推定された。一方基底細胞癌での著明な増加のメカニズムについては,何等かの機序によって脱顆粒が抑制されたものと推測されるが,基底細胞癌特異な現象である可能性も否定出来ない。
- 千葉大学の論文
著者
-
岡本 昭二
千葉大学医学部皮膚科学教室
-
西林 聰武
千葉大学医学部皮膚科学教室
-
岡本 昭二
千葉大学医学部皮膚科学講座:(現)増田病院(千葉)
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西林 聡武
千葉大学 皮膚科
-
西林 聰武
千葉大学医学部皮膚科学講座:(現)増田病院(千葉)
-
岡本 昭二
千葉大学医学部・皮膚科学
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