テクストとしての王逸『楚辭章句』 : その問題点
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概要
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後漢王逸『楚辭章句』は、戦国末から後漢に至るまでの楚辞及び屈原理解の集大成であり、先行する注釈書が亡んだため、後世に伝わったものとしては最古の楚辞注釈書である。また、楚辞学の基礎が形成された漢代の楚辞注釈本としても唯一の伝本である。これらのことから、楚辞学において後世の如何なる研究も取って代ることの出来ない特別な位置を占め続けて来た。また屈原の形象(イメージ)形成においても、司馬遷『史記』「屈原傳」と共に屈原に関する最古の情報源として、屈原像の祖型を後世に提示する作用を果たし続けて来た。小稿は後者の位置付けから王逸『楚辭章句』を取り上げる。『楚辭章句』は、後漢元初年間に成立したと考えられ、その後宋代に刊版が盛んになるまで約八百年間の手写を経ているが、この時期の写本で今に残るものは無い。刊本としては最も早期になる宋版の実物は今に伝わらず、現存する善本は明代に宋版を翻刻したものである。このような状況からテクストとしては多くの問題が指摘されている。小稿では、先行研究において指摘されている問題点と議論を整理し、その上で主題の考察に当たって本研究が取る立場を述べる。
- 2006-03-20
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